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SF

をちこちさんとわたし

気難しい男と記憶を持たない女とのデコボコの物語であるものの、その物語は面白いように進んでいくような、見るも不思議な一冊と言える。 不思議であるがゆえに謎が謎を呼ぶのだが、読んでいて「良い意味で」わけがわからなくなる。もちろんストーリーがめちゃくちゃなわけではなく、むしろ整っているのだが、その整い方が「不思議」さを醸し出し、それが物語の面白さへとつながっていく。 文章も現代文よりも少し昔の古典と現代 […]

きょうのできごと、十年後

本書は「きょうのできごと」の続編であるのだが、ちょうど前書がでて10年という節目を迎えたため「十年後」というタイトルがついたと言える。 ちなみに本書も設定は「きょうのできごと」から10年後を舞台となっており、その10年前に出てきた人々が10年後に再会をした所から物語は始まる。 どういった作品なのかというと、10年後の再会前後の時の他愛のないエピソードが綴られている。しかし日常の中でも10年間という […]

わたしをさがして

「兄弟姉妹」 この関係は血のつながる・つながらないに関わらず近い存在である。しかし近すぎるあまりに忌み嫌う、そういう傾向に陥ることも往々にしてある。ただ距離が近いということから親近感も存在する。その相対する感情が交錯し、葛藤が生まれる。 本書は姉妹の物語であるが、才色兼備の姉が失踪した姉を探すために主人公は旅に出た。姉探しの旅なのだが、同時に「自分探しの旅」でもあった。その度の最中、自分自身の持っ […]

悪ノ娘~黄のクロアテュール

著者の「悪ノP」は元々「ニコニコ動画」にて、ボーカロイドを使用した楽曲制作を手がけている方で、2008年にデビュー以降、様々な楽曲をニコニコ動画などの動画共有サイトに提供し、話題を呼んだ。その中で本書のタイトルである「悪ノ娘」や「悪ノ召使」が100万回以上の閲覧を記録したという。その2曲の歌詞をベースに本書が生まれた。しかも本書に出てくるキャラクターのモチーフは初音ミクをはじめ、鏡音リン・レンなど […]

献灯使

本書のタイトルは「けんとうし」と呼ぶ。ただ「けんとうし」というと、どうも「遣唐使」を連想してしまうのだが、本書はあくまでは「献灯使」として扱っている。 本書は表題作の他にも「韋駄天どこまでも」「不死の島」「彼岸」「動物たちのバベル」と言った作品が収録されている短編集である。 中でも注目すべきは表題作の「献灯士」であるが、その「献灯」について辞書で引いてみると、 「社寺・神仏に灯明(とうみょう)を奉 […]

機械男

本書のタイトルである「機械男」を見ると。「電車男」「電波男」「聖書男」に続いて新しい「男」が誕生したのか、という邪推が出てきてしまう。しかも本書が出版されたのが2013年。何とも「男」シリーズの最新作と言っても過言ではないとも考えられる。 妄想はここまでにしておいて、本書は「機械」しか愛せない男の生き様を描いている。そう考えていくと二次元しか愛せない男の恋を描いた「電車男」にも通ずるものがあるのか […]

未来の回想

本書の小説は、80年以上前に書かれていたものが、復刻に近い形で翻訳されている。80年前にかかれたSF作品でありながらも、色褪せていないと言うから驚きである。 本書は「タイム・マシン」の製作に捧げた男の物語であるが、近き未来、そして遠き未来へと行くために、激動の時代を予見しているかのようなスリリングさも含まれている。 「タイム・マシン」というと、ドラえもんに出たり、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャ […]

ドール~ルクシオン年代記

今までいくつかSF作品を呼んだ事のある私だが、「ドール」と「レディ」の2編だけでこれほど分厚い物を読んだにもかかわらず、スリリング、かつ爽快さを覚えた小説は存在しない。むしろ分厚さも苦にならないほど、スイスイと読むことができる。 最初に「ドール」だが、よくある「SF作品」というと、宇宙で働く人、科学者、戦闘員といった、どちらかと言えば「人間」が描かれることがほとんどである。この「ドール」も人間のよ […]

パワードスーツ

日常の中に「SF」の要素が組み込まれている様なタイトルである。 本書の舞台は近未来の地方都市を舞台にしており、老人達が次々と失踪したときから物語が始まるのだが、やがて「連続失踪事件」から「殺人事件」へと発展したとき、「パワードスーツ」及びそれに関わっている人物を巻き込んでスリルもあり、滑稽でもありと言える様なミステリー作品である。 SFとミステリー、2つの要素を合わせながら展開していくのだが、高齢 […]

会社が消えた日

いつもの通り出勤していた矢先、会社そのものがなくなってしまった、という物語である。 気がついたら自分の席がなくなっている、つまり突然解雇されたというエピソードもあれば、いつも通り出勤したら、いつの間にか倒産し、会社も閉鎖されたということは現実として起こりうることである。 しかし「会社」のある建物そのものがなくなることは、私の中では聞いたことがない。何せSF小説と呼ばれる作品だからである。 その不可 […]