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文芸・評論

作ってあげたい小江戸ごはん2 まんぷくトマトスープと親子の朝ごはん

「小江戸」と言うと全国至る所に存在するのだが、その際たる所が埼玉県川越市である。江戸情緒溢れる風情が有名であり、駄菓子で有名な「菓子屋横丁」も存在する。 その小江戸・川越の外れにある「たぬき食堂」という定食屋にて織りなす物語が、本書である。もっとも同名のタイトルはシリーズものとなっており、本書はその2冊目である。小さな定食やで頼りない亭主と看板娘が切り盛りする。 そこで出される料理は美味しいと言う […]

大人になる時

人は誰しも「大人」になる。その「大人」となる定義は肉体的に大人になることもあれば、人によっては精神的に「大人」になるという意味合いもあり、人それぞれとしか言いようがない。 本書はその「大人」になることについてをエピソードを綴った短編集である。しかし「大人」となると、良い部分もあれば悪い部分もあるのだが、本書はむしろ「悪い」部分の方が強く表れている。しかもその「悪い」部分が「ホラー」の如く描かれてお […]

戦百景 長篠の戦い

天正3年5月21日、三河国長篠城を巡っての戦いである「長篠の戦い」が始まった。単純に結果だけを書くと織田・徳川連合軍が、武田軍を圧勝だった。しかしその開戦から、戦いまでの道のりは織田・徳川・武田それぞれの思惑が張り巡らされるものだった。 この長篠の戦いにて、織田軍は「鉄砲」を使い、騎馬に長けていた武田軍を打ち破ったのだが、それぞれの将軍がなぜ長篠の戦いにて、騎馬・鉄砲の戦いを行ったのか、また徳川と […]

無貌の神

本書は短編集であるが、全てダークな話で統一されている。 その中で、最初に出てくるのが表題作である「無貌の神(むぼうのかみ)」である。そもそも「無貌の神」自体は、 クトゥルフ神話に登場する邪神「ナイアルラトホテップ」の異名ピクシブ百科事典より とあり、なおかつそれを題材にした作品としてロバートブロックの同名の小説がある。壮大な世界観で有ながらホラーの要素も多いクトゥルフ神話の中でも無貌の神ことナイア […]

ファイナルガール・サポート・グループ

「ファイナルガール」は元々、 ホラー映画に登場する人物類型である。1960年代後半以降のアメリカで大量に作られたホラー映画が、一様に「純粋な若い女性が男の殺戮者と対決するが最後には生き残る」という構造をもっていることが映画研究の分野で注目され、この類型的な女性像が映画研究者キャロル・クローバーによって「ファイナル・ガール」と命名されたWikipediaより と意味している。そのため「ホラー」の分野 […]

満月珈琲店の星詠み

「星詠み」はいわゆる「星占い」の一種であるが、その星詠みに疲れた方々に対し星や月にまつわる飲み物・料理を振る舞う喫茶店がある。しかもその喫茶店は「満月」の夜にしか開店しない店である。 来店する方々も星詠みに疲れた方々であるが、起業家やライターなど様々な仕事の人が立ち寄る。しかもその喫茶店のマスターは猫というもの。 来店するそれぞれの人に合わせた「星詠み」と併せてのメニューが振る舞われるのだが、それ […]

叙述トリック短編集

本書の冒頭に この短編種は『叙述トリック短編集』です。収録されている短編には全てトリックが使われておりますので、騙されぬよう慎重にお読みくださいませ。p.8より と記載されている。しかも冒頭は「読者への挑戦状」と銘打っており、著者と読者との駆け引きといった魅力も持っている。 短編集のように見えて一編それぞれに、著者の織りなすトリックがどこにあるのかを、短編の物語の中に散りばめている。もっとも冒頭に […]

あの日の交換日記

「交換日記」自体、現在あるかどうかはわからないのだが、私が学生だった当時はごくわずかだったとはいえやっている人たちがいた。どんなことを書くのかというと、何も日常的な事を書いただけとのこと。今となってはメール、さらにはLINEなどのチャットなどもあるため、デジタルの面で交換日記ができるにはできるのだが、その必要がないほど、コミュニケーションツールも進化している。 コミュニケーションツールが進化すると […]

インタビューズ

実際に私自身インタビューを行った事が何回かある。仕事と言うよりも、プライベートの場のインタビューしかないのだが、実際に質問をしながらその人の本質を明かしていくのがどうしても面白い。 本書は「平成」と呼ばれる時代について、100の人びととのインタビューをもとにして、深層を映し出す物語である。1989年から2019年の30年間の中で、何が起こり、インタビューを受けた人びとはどのような変化・出来事が起こ […]

ふりかえる日、日―めいのレッスン

物語は、突然の出来事などから起こることもあれば、何気ない日常からも生まれる。特に何気ない日常の中にも多少なりの「変化」があるのだが、その「変化」のあり方が、日々の物語を紡いで行く。 本書は主人公の姪が日々触れるあらゆるものに耳を澄ませて成長して行くと言うものである。五感のうちの「聴覚」によって春夏秋冬を描き、なおかつ物語として織りなしていく所に魅力がある。 ショートショート形式にて描かれており、タ […]