CATEGORY

文芸・評論

我ら荒野の七重奏

私自身吹奏楽部を中学・高校とやっていたことから吹奏楽に関する物語や本などは親近感がある。その吹奏楽部は私自身も体験したことがあるのだが、学校によっては朝から晩までずっと練習に明け暮れるようなことがあり、私が高校時代の時には一時期土日と合宿して学校に寝泊まりするようなこともあったほどである。 本書はとある中学校の吹奏楽部の話であるのだが、視点は吹奏楽部に入った子どもの母親である。子どもが頑張るだけで […]

好きなひとができました

一見ポジティブな言葉のように見えるのだが、好きな人から、あるいは恋人から言われると、これ以上傷つけられるような言葉は存在しないのだという。彼女はおろか恋愛自体が何十年もない自分にとってはどれほど傷つけられるのかは未知数である。 しかしその言葉はとてつもなく重く、なおかつ残酷であり、人によっては殺人事件を起こしたり、自暴自棄になったりすることさえもある。またまさに「慟哭」と呼ばれるほどの酷い悲しみに […]

白いシャツは、白髪になるまで待って

オシャレは老若男女問わずあり、それを楽しみにしている方々も多くいる。その逆に私のように頓着しないような人もいる。 しかしオシャレをすることにより、自分自身の感性や美意識を高める効果もあるためオシャレは行っていった方が良いのかもしれない。本書の著者はファッションエッセイストとしてファッションにまつわることをエッセイにしているのだが、元々は女性誌の編集者として活躍した。活躍の中でファッションや女性とし […]

猫は抱くもの

人と猫、一見接点がないように見えて、実は接点が存在する。そのことを示している一冊と言える。 猫も人間も何人・匹と出てくるのだが、それぞれの物語があり、それぞれ人と猫との関わりが人間と共有するところ、共感するところ、相反するところなど様々である。さらに関係の中にはハートウォーミングなエピソードまであり、人と猫との関わりの良さがものの見事に描かれている。 そのためか本書のタイトルのようなことはまさにそ […]

夜姫

本書は新宿歌舞伎町のキャバクラの女王と、その女王に怨恨の感情を持つ女性が歌舞伎町で闘うというものである。もっとも「闘う」といっても武器でのドンパチではなく、キャバクラ内におけるお客・売上の争奪戦と言ったものであり、いわゆる「お水」と呼ばれる世界での闘いを映している。 キャバクラにしても、ホストにしても、夜の世界における話はいくつもあるものの、かつては成り上がりのようなサクセスストーリーや伝説ができ […]

仏像ぐるりの人びと

とある大学生がアルバイトのため仏像修復師のところにて働くところから物語は始まる。生活費を稼ぐために働き始めたのだが、そこから仏像の魅力にのめり込み始め、謎の仏像との出会いから、仏像の研究会に入り、謎を解明するといったことにも巻き込まれるようになった。 仏像を基軸にしている物語である一方で、それを巡った主人公、さらには仏像修復師とその家族との人間模様が仏教で言う所の「曼荼羅(まんだら)」のように広が […]

海の乙女の惜しみなさ

本書は短編集であり、表題を含めて5編収録されている。その5編は舞台も境遇も異なるとは言えど、共通している部分として「どん底」という言葉がある。その「どん底」が海にもそれぞれあるのだが、そこが深い所を意味している所から「海」を連想できる。 ちなみにそのどん底としてはアメリカ的な考え方や精神から来ているものが多い。またそのアメリカ的な精神と、それぞれの主人公はそれなりの年齢であるため、「老い」と「死」 […]

僕は金になる

「金」は「かね」と詠んでしまいそうになるのだが、表紙にもあるように将棋の「金将」から「きん」と読む。しかしながら本書は将棋は将棋でも、「賭け将棋」と呼ばれるため、「かね」と言われてもおかしくない。また将棋以外にもギャンブルなどもあるため「かね」といった要素も色濃くあると言える。 家族もデコボコの様相である。父親はギャンブル好き、それでいて主人公の姉は将棋の天才でありながらも、父のギャンブルの種銭を […]

いつか深い穴に落ちるまで

「深い穴」という言葉がどれだけ意味深なのかということを本書でもって感じさせられた一冊である。本書はまさに「深い穴」というのが物理的に明示されているだけでなく、本書の背景そのものにある所での暗喩としても使われるため、重要なキーワードと言っても過言ではない。 舞台はとある企業であるのだが、サラリーマンであったり、官僚であったりと、様々な人物たちが織りなすのだが、そこには戦後の日本社会システムが映し出さ […]

歌人の行きつけ

よくあるものとして芸能人の行きつけや、本でも文豪の行きつけといった飲食店の紹介に関する本がある。もっともそれらの飲食店には様々なエピソードがあり、なおかつ文豪に至っては、小説などの作品を生み出すための糧として行きつけにしているケースもある。 本書は中でも「歌人」たちがゆかりとなった飲食店が紹介されている。レストランや小料理店、さらにはカフェやバーなど様々であるものの、中には歌人のみならず、先述の文 […]