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文芸・評論

迷子の大人

いわゆる「迷大人」と言うべきなのか、それとも「いい年こいて」と言うべきなのか分からないのだが、迷った大人がいるという。 しかし本書の言う「迷子」とは物理的に親が見つからないと言ったものではなく、人生において「迷っている」ことを指した「迷子」を言う。その迷子から脱出するためによくあるのが「自分探しの旅」なのだが、本書で取り上げる女性もまた自分探しの旅のために特急列車に乗って旅をするという。冒頭で 「 […]

波に乗る

入社してわずか1ヶ月で会社を辞めた後に届いた訃報。それは父親の死であった。しかしその死をきっかけに父はどのような人生を送っていったのか、何も知らなかった主人公は父が生活をしていたある丘の上の海の街に行くこととなった。 その海の街は当然の如く海の波が毎日のようにあり、なおかつ音も聞こえる。波の音と共に父がどのような人生を送っていったのか、それを探す旅が始まった。 その度を続け、街の人、それも生前父親 […]

14歳のバベル

旧約聖書の「創世記」に「バベルの塔」なるものがある。それは、 「1.ノアの大洪水後、人々が築き始めた天に達するような高塔。神はこれを人間の自己神格化の傲慢として憎み、人々の言葉を混乱させ、その工事を中止させたという。  2.転じて、実現の可能性のない架空的な計画。」(「広辞苑 第七版」より) とある。本書はもちろん小説なので1.の意味に限りなく近いのだが、そのバベルについて14歳の男の子が見た夢が […]

テュポーンの楽園

東京の郊外にある人口わずか900人の街だった。しかし東京にある「集落」と言えるところであり、文化・慣習も異なるのかも知れない。 しかしその「異なる」と言うよりもむしろ「異常」と呼ばれるような事件が起こってしまった。それは「洗脳」と呼ばれるようなものだったという。その洗脳事件を巡って警視庁や自衛隊も駆けつけ、解決への道筋を探るようになる。 もちろん本書の舞台は東京都であるのだが、集落自体は架空のもの […]

穴 HOLES

単純に穴を掘るだけの一冊だけであるかも知れないのだが、本書が紡ぐ物語は単純に穴を掘るだけではとどまらない。穴を掘ることを巡って様々な「罪」と向き合い、乗り越えていく。 その「罪」はどこから来ているのか、本書で出てくる少年たちの数だけある。しかし主人公はむしろ「無実の罪」を着せられたのだが、その「無実の罪」自体が「罪」としてカウントされているのかも知れない。それはキリスト教として存在している「原罪」 […]

感情8号線

見るからして「うまい!」と思わせるようなタイトルである。もっとも「東京都道311号環状八号線」の略称である「環八」のうち「環状」を「感情」と変えているからである。しかしその本書のタイトルの捩り元である「環八」が本書の物語の舞台となっている。 そもそも環状八号線は電車では遠回りになっているにもかかわらず、直線で歩いて行くと近道になる。電車で楽に行こうとしても色々な紆余曲折があり、しかしちょっと歩こう […]

アメリカ最後の実験

軍事的な小説なのかと思いきや、本書の表紙にもある通り「音楽」を中心とした小説である。その音楽をアメリカを舞台にして「実験」を行うというものである。 その実験は殺人が起こる「ミステリー」であり、その事件の中で取り巻く3人の人物、その背景には「音楽」があるというものである。 「音楽」のつながりであれば良いのだが、それ以外のつながりはどうなのかと言うと、家族ではあるのだが、「荒廃」と言う言葉がよく似合う […]

歴史はバーで作られる

本書のタイトルを見ると「どうやって歴史を作るの?」と疑問に思ってしまうほどである。そのバーで歴史学者が侃侃諤諤の議論を行うことにより、史実と考察を行っていくことによってつくられるというのだから、本書のタイトルは成り立つという。 本書で取り上げる「歴史」は「マヤ文明」や「源義経」「銅鐸」のことについてである。いずれにしても歴史的な考察で議論を呼んでいるのだが、未だに結論が出ていない要素も数多く存在す […]

初恋料理教室

私自身料理をし出してから料理が楽しくなることがある。時間はかかるものの、料理をする前の材料集めから調理に至るまで、色々なアイデアを使うなど頭を使う。そのことで思いも寄らなかった気づきを得ることができ、仕事でも転用することがけっこうある。そのことから料理は好きだが、まだまだ味は良くなく「下手の横好き」と言う言葉を使ってしまうほどである。 本書の舞台はとある料理教室が舞台になっている。「男性限定」とな […]

ラジオ・ガガガ

私自身テレビはあまり見ない。その代わりラジオを聞くことが頻繁にある。ごく最近ではニコニコ生放送で行われたり、インターネット配信しているようなラジオもあり、それを聞くことが多くなったのかも知れない。テレビのように見ることによって行動を奪うことなく、何かをしながらの片手間に情報を得たり、面白く聞いたりすることがあるため、重宝している。 本書はその「ラジオ」をテーマにした短編集であるのだが、取り上げられ […]