CATEGORY

文芸・評論

スクロール

本書は短編集であるのだが、その短編集は「青春」と言う言葉がギュッと詰まっている短編集と言える。短編一つ一つには学生や社会人、といった舞台や年齢層は異なるものの、一直線に仕事やプライベートを突き進むというような状況にあることを感じ取れる。 本書のタイトルである「スクロール」は何を意味しているのか、短編集のタイトルの一つであるのだが、仕事の場では思い通りに行かずくすぶっていた中で事件が起こり、そこから […]

満月の娘たち

多感な中学生の時代には、どのようなものを見たり、考えたりしているのか、生きること、命、さらには人間関係に至るまで様々な悩みを持つようになる。もっとも思春期真っ只中の中学生だけあり、様々なことを感じるようになる。 また人によっては「反抗期」を迎え、親に対する反抗心も出てくる。もっとも本書に出てくる中学生もまた「反抗」と言う言葉がよく似合う。 本書はさらに親もまた娘に対する不満を募らせる。その不満とは […]

ハコネコ

もう何度も書いているように私自身は大の猫好きである。ただ猫自体は飼ったことがなく、なおかつ猫カフェにすら行ったことがないのだが、道を歩いているときに猫にであったら振り向いてくれるように鳴き真似などをする。そのことで振り向いてくれるとなんとも言えないような「癒やし」を得ることができるようになる。他にも本書のような猫にまつわる写真集やエッセイを読むのもまた癒やしとなる。 ちなみの本書はどのような一冊な […]

赤へ

人間における「本当」というのは何か、そこには「本性」というのがある。もっともそれが表れるのは極限の状態、それも「生」と「死」と言う言葉に直面するような場面によって出てくるのかも知れない。 本書はその「生」と「死」を描いた短編集である。その生死はなんとも生々しく、なおかつ不穏さもはらませているような部分も多くある。しかも生死との出逢い方もそれぞれ、年代もそれぞれでありながら、その「それぞれ」さが読ん […]

パンドラの少女

ギリシャ神話の中でも最も有名なもので「パンドラの箱」がある。これはゼウスからの贈り物として箱があったのだが、「決して開けるな」と言われた。しかしパンドラは好奇心に負けて箱を開けてしまい、災厄を飛び出すこととなったことを挙げている。 本書はその「パンドラ」と言う言葉をもののたとえとして挙げている。本章の舞台は完全に崩壊したイギリス、その国の中の荒廃した街の中で発見されたとある少女の存在を描いた物語で […]

忘れてはいけないことを、書きつけました。

日常生活を送っていく中で「忘れる」ことは色々とある。しかしその「忘れる」と言う機能は不便で、どうでもいいことを忘れられず、肝心なことを忘れてしまうのだから始末が悪い。しかしその忘れることを助長したり、あるいはそれらを未然に防ぐために、文章にしてしたためると言うこともまた忘れるため、もしくは記憶に残すための一手段としてある。 著者もまたその「忘れる」ことを避けるために、春夏秋冬の折々の事柄から、料理 […]

俺たちはそれを奇跡と呼ぶのかもしれない

「奇跡」と言う言葉をあなたは信じるか。 私自身確率に関して色々と研究したことはあるものの、それでも「奇跡」は信じている。低い確率の中でも、どんなに悪い方向でも逆転してうまく行くと言ったことがある。それを「奇跡」と私は考える。 私の考えはここまでにし、もしも自分自身が朝目覚めたら他の誰かになったらどうなるのか、それを「奇跡」だと思うのか、それとも「不自然」だと思うのか、捉え方によっても異なるかも知れ […]

續 太閤私記

農民から織田信長に仕え、本能寺の変を乗り越え、天下統一を果たした豊臣秀吉。関白から太閤にまで上り詰めるのだが、天下人に至るまでの道のりを「私記」と言う形で創作した一冊である。 もちろん創作なので史実とは所々異なる部分があるのだが、その異なる部分を著者の見せる豊臣秀吉の側面が映し出している。 元々諸説はあるものの豊臣秀吉の人生はまさに「立身出世」と呼ばれるような人生を歩んでいったのだが、信長に仕える […]

新装版 花と草木の歳時記

元々本書は1981年に出版されたのだが、それが37年の時を経て復刻した一冊である。37年前と全く同じというわけではないのだが、その時代の中に生きた自然と現在の自然、いずれも変わらないものがある。 本書はそういった草木の有り様を文章にてしたためたエッセイである。しかもその草木は春夏秋冬、さらには月によって変わってくるだけあり、月ごとに見える草木も変わってきており、さらには情景も変わってくる。 私自身 […]

愛が挟み撃ち

簡単に言えば「三角関係」であるのだが、いざ「三角関係」のことを考えるとドロドロとした印象を持ってしまうのだが、本書における「三角関係」はどうも考えさせられるものである。 その「考えさせられる」理由として「愛」そのものの定義にある。哲学的な論考のように思えるのだが、実際に男女の付き合いをする、あるいは恋愛をしないと分からないのかもしれない。もっとも自分自身は恋愛事にはとても疎い(というか彼女いない歴 […]