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文芸・評論

あなたの若さを殺す敵

「若さ」には限りあるものの、年老いたとしてもどこかに「若さ」は眠っている。その眠っている若さでもって人生を謳歌できるとするならばこれ以上のことはない。もちろん青年から成年になりたての世代であればまだ「若さ」が有り余っているので、それを使わない手はない。 しかしその「若さ」を狙って殺すような「敵」が存在するという。その「敵」は、はっきり「敵だ」と認識できるようなものではなく、あなたのごく身近な存在に […]

百瀬、こっちを向いて。

まず本書の著者である中田永一は2002年に「GOTH」という本の著者である乙一本人である。また本書は2014年に映画化され、元ももいろクローバーの早見あかりが主演となった。そのことから非常に話題となった一冊といえる。 ちなみに本書は恋愛小説であるが、高校卒業後の主人公が高校時代のとある「嘘」を思い出し、彼女との出会いによって高校時代に芽生えた恋が再び芽生えることとなるというものである。 高校に芽生 […]

情け深くあれ―戦国医生物語

医師(いし・くすし)の仕事はかねてから病気を治すことに特化した仕事である。そういった役割は今も昔も変わりない。 さて本書であるのだが、戦国時代における若い医師の物語である。その若い医師は元々武士だったのだが、ある「別れ」によって、医学中興の祖である人に弟子入りし、医術の修行を進めていく。もちろんその時は戦が激化の最中で、至るころで混乱を極めた。しかしその混乱の中で患者たち、そして師匠とふれあいの中 […]

花が咲く頃いた君と

本書のタイトルにある「花のさく頃」、そこに出ている花は「ひまわり」「コスモス」「椿」「桜」と春夏秋冬を表している。順番で言ったら夏・秋・冬・春の順と言える。特に「桜」は関東では来月咲き、別れと出会いの両方を象徴付け、所によっては年度をまたぐ象徴としてある。 四季それぞれにある「花」、その花とともに彩られる青春が本章に収められている。もちろん本書で取り上げている物語は最初に書いてあった四季それぞれの […]

下に見る人

「自分より下」を見る人はどのような目や表情で見るのだろうか。ある意味「見下す」ような状況にあるのだが、状況や境遇、さらには人によって下に見る人の表情は変わってくる。本書はそういった下を見る人を主観においた話を収録している。収録している数は全部で24あり、しかも1つ1つページ数は、ばらつきはあれど、だいたい3~4ページほどと、どちらかというとショートショートにも見える一冊である。 それだけありとあら […]

フォトグラフール

「フォトグラフ(写真)」と「フール」を合わせた造語が本書のタイトルとなっている。その中でも「フール」は直訳すると「馬鹿」と書くのだが、本書の内容からすると「嘘」と言う意味合いも持っている。「写真」と言うとありのままの姿を映し出すように見えるのだが、どうもその「嘘」と呼べるような姿も映し出してしまう。また写真には「コラ」、いわゆる「コラージュ」と言う「嘘」で塗り固めることができる。 そのことを考える […]

レイニーキラー

「レイニーキラー。  雨の日の殺人者  またの名を傘男」(p.2より) 本書はおそらく前者で述べている「雨の日の殺人者」を挙げている。触れただけで人の心を読み取ることのできる体質の持つ主人公と、逆に人の心が全く理解できない僧侶というなんとも奇怪な2人が織りなすミステリー作品である。全く違う性格でありながら、衝突があるものの、いつしか友情が芽生え、凸凹コンビみたいになった。 その過程でのコミカルさも […]

甘いお菓子は食べません

「甘いお菓子」というのはある意味レトリックで、「お菓子」は恋愛に見立てている。直接的にタイトルのことを表すと「もう(少女マンガや純愛小説のような)甘い恋愛はしない(もしくはできない)」と宣言しているようなものである。 それ故に短編集であるが、ドロドロとした恋愛模様、そして赤裸々に語る女性の恋愛事情を描かれており、その姿はなんとも「怖い」という一言である。 その「怖さ」たるや、男性にしかわからない女 […]

トマト・ケチャップ・ス

とある女子高生が、同級生の2人から漫才トリオに誘われたことから物語は始まる。しかも誘われた2人は容姿端麗・成績優秀と呼ばれる才女で、主人公はまさか私が誘われるとはという戸惑いを覚えるものの、誘われるがまま本書のタイトルである「トマト・ケチャップ・ス」という名前のトリオを組んだ。 トリオを組み、お笑いネタを考え、そして漫才を一つずつつくる日々。その日々の中で出てきた少女たちそれぞれの家庭事情。それに […]

骨風

本書のタイトルからして無骨な作品のイメージがあったのだが、実際に中身を見てみると短編集であり、表現もけっこうそぎ落としつつ、伝えるところは伝えられている作品である。しかしそれでいて繊細で、痛みや「死」といったことを向き合いながら、ひたむきに生き続けるような姿を映し出している。 もちろん短編集であるので、表題作の「骨風」や「矩形(くけい)の玉」「花喰い」「鹿が転ぶ」「蠅ダマシ」「風の玉子」「今日は  […]