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エッセイ

コーヒーカップの耳 阪神沿線 喫茶店「輪」人情話

私自身喫茶店に行くことが良くあるのだが、たいがいは勉強などを行うためのことが多い。静かな雰囲気でありつつ、ちょっとした喧噪が集中力を生み出してくれる。もちろん色々な人との語らいを耳にする事がある。たいがいはネガティブな話なのだが、中には奇想天外な話もあり、小耳にはさみながら勉強しているため、そういった話が耳に残ってしまうこともしばしばある。 それらも全て喫茶店の楽しさの一つである。「一つ」と表現し […]

日本のヤバい女の子

女の子にも色々な人がいる。その「色々」の傾向自体は男の子のそれとは大きく異なるが。女の子の中には、同性から見ても「ヤバい」と思われてしまう女の子もいる。本書では、そのようなこの姿を取り上げている。 しかも本書で取り上げている女の子は全て古典、それも日本文学における登場人物である。もっとも「ヤバい」とひとえに言っても様々な種類であるのだが、突然いなくなる、キレる、人間をやめる、相手を殺す、理不尽にハ […]

たそがれてゆく子さん

人は誰しも老いて、やがて死ぬ。そんな当たり前なことなのに、なかなか受け入れない、あるいは受け入れたくない人も少なからずおり、かくいう私も時折そのような感情に陥ることがある。 人として老い、そして生きていく中での「別れ」をどのようにして接していくか、生きている人それぞれに課せられた課題なのかもしれない。もっともその課題には正解がなく、なおかつ追い求めながら老いていく姿がどうしても目に浮かぶ。 ただ「 […]

並行宇宙でしか生きられないわたしたちのたのしい暮らし

面白い人は着眼点もまた独特である。もっとも「独特」と言える観点は、日常生活の中で生まれているという。 本書のタイトル自体は、けっこう宇宙人のような銘打ち方であり、なおかつ不思議ちゃんなのかなという印象を持たれてしまう。しかし本書の著者はある意味「宇宙人」と言えるほどの天才なのかもしれない。ユーモアにしても、着眼点にしても、自分では到底観ることのできないところをことごとく突いている。 車の運転にして […]

臆病な詩人、街へ出る。

中学の時代から詩を始め、高校になった頃には現代詩の中でも権威ある賞の一つである「中原中也賞」を受賞するなど、賞を総なめにしてきた。そのため「早熟の天才」と言われるようにまでなった。 しかし大学へ進んだ後は著者自身「冴えない女」と自称するようになった。なぜ「冴えない」と自称したのか、そこには、 就活経験ゼロ、恋愛経験も未熟。残されていたのは、世間知らずで平凡な「冴えない女」だったp.3より とある。 […]

皆川博子随筆精華 書物の森を旅して

私事ではあるのだが、私自身が書評を始めたのは2007年のことである。それから13年もの間、多くの本と出会うこととなった。数え切れないのだが、書評を行っただけでももう5千冊を超えている。本という書物に迷いながらも旅を続け、今に至っているのだが、この旅はまだまだ終わらない、もっと言うと一生終わらないかもしれない。 私事はここまでにしておき、本書は1970年代から約50年もの間文壇で活躍した皆川博子氏が […]

明るい覚悟 こんな時代に

著者はかつて文化放送のアナウンサーで、文化放送退社後は作家として活躍している。ありとあらゆる側面での作品を生み出してきたが、その著者は今年の1月で75歳を迎えた。75歳はきりが良いのだが、いわゆる「後期高齢者」の仲間入りを果たしたことになる。 これからの人生をどのように生きたら良いか、「老い」という避けられない要素が色濃く映り、なおかつ周囲の近しい方々が逝去する、あるいは病に倒れる中、自身も物忘れ […]

「さみしさ」の研究

「さみしい(寂しい・淋しい)」を辞書で引いてみると、 「1.もとの活気が失せて荒廃した感じがする。  2.欲しい対象が欠けていて物足りない。満たされない。  3.孤独がひしひしと感じられる。  4.にぎやかでない。ひっそりとして心細い。」(「広辞苑 第七版」より) とある。本書の中核はどちらかというと3.の意味にあたる。ツービートとして漫才ブームを牽引し、そして映画監督としても活躍するなど、いちお […]

ぼくは眠れない

本書は長らく不眠症を患った方の体験談であるのだが、著者自身は作家・エッセイストなどマルチに活躍する人物である。順風満帆に見えるのだが、その裏には35年もの間「不眠症」を患っていたのだという。その不眠症の闘病日記と言うべき一冊が本書である。 1.「はじまりは唐突にやってきた」 不眠症の始まりは突然起こった。それは3月に、仕事を終えて、明日に備え、睡眠に入ろうとするもいつまで経っても睡眠にありつくこと […]

自然に学ぶ

本書の著者の名前を見てピンと思い浮かんだ人もいるかもしれない。もっとも本書の帯にも書いてあるのだが、今からちょうど20年前の2000年にノーベル化学賞を受賞した方である。その白川氏が自身、そして研究者としての人生を振り返りながら、科学の愉しさをエッセイとして綴った一冊が本書である。 1.「自然に学ぶ」 長らく科学的に研究を続けていった中で新たな発見を見出すことができるようになる。と同時に科学におけ […]