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文芸・評論

いとの森の家

福岡の団地で暮らしていた娘が父親のある「思い付き」で山々に囲まれた小さな村に住むようになったという。その住むところが「森の家」と呼ばれるところにあるのだが、その森の家の中では「おハルさん」と呼ばれる婆さんがいる。そのおハルさんは娘にとって特別な存在にまでなったのだが、その中で出会っていく「生」と「死」を描いている。 元々は一般書にて書かれたのだが、後に児童書にもなり、やがてドラマ化された一冊であっ […]

みんなバーに帰る

私自身バーには1人でいったことがないのだが、私の住まいの近くにはバーはいくつかあるので、時間とお金があった時に行ってみようとも考えている。その理由としては酒を楽しむのみならず、隣り合わせの人々との語り合いもある。そのことからバーにはほかでは味わえない「出会い」が存在するため、その好奇心からバーに行ってみたいと思っている。 私事の話はここまでにしておいて、本書の話に移る。とある町はずれのバーにやって […]

猫ノ眼時計

元々本書は「蘆屋家の崩壊」「ピカルディの薔薇」の2つから続く幽明志怪シリーズの最終編となる一冊である。 「豆腐」を通じて仲良くなった小説家と自分の2人が、様々な人物を通じてどのような不思議な体験をしていくのかについて描かれている。もちろん短編集であるので、その一つ一つには奇怪さはあるものの、面白おかしく描かれているほかに、仲間の「絆」を事細かに描かれているので、いろいろな感情を呼び起こしてしまう。 […]

鸚鵡楼の惨劇

本書の舞台は1962年、東京都新宿区にある小さな洋館「鸚鵡楼(おうむろう)」と呼ばれるところである。そこで起こった事件は50年に渡って続くものだった。実際に事件が起こったのは冒頭にもあったように1962年だが、その後1991年にはその事件による恐怖が漂っていた。 その漂っている恐怖が再び2013年に現実となって現れたというのが本書の物語である。異なる時間軸でありながらも、同じ場所で起こる惨劇、その […]

CUTE & NEET

本書の著者は「逆転裁判」で大ブレイクを果たした方であるが、その方が幼稚園を舞台にした作品を出したという。逆転裁判の雰囲気の幼稚園なのかと想像してしまうと、なんともシュールに思えてしまうのだが、実際の本書の中身はそうではない。 本書はとある引きこもりのニートが姪の面倒を見るようになってからというストーリーである。そのストーリーの中には冒頭でも述べた通り幼稚園が出てくる。その幼稚園で起こる出来事、そし […]

記憶破断者

わずか10数分の記憶しか持つことのできない記憶破断者と記憶の上書きのできる男の戦いを描かれたある意味SF作品と言える一冊である。しかしその記憶を巡ったグロテスクな表現も出てくるホラー作品ともいえ、後者の男の犯罪を暴き、捕まえるという「ミステリー」とも言える。 様々な要素が織り交ぜられた一冊であるが、そのミステリーを解き明かす元として、そして記憶破断者の最強のツールとしてあるのが「ノート」である。そ […]

蚕食鯨呑――世界はおいしい「さしすせそ」

本書で取り上げている四字熟語はそのまま文章にすると、 「ときに蚕のように食べ、ときに鯨のように呑む」 とある。こういった四字熟語は飲み食いのことを言っているように見えて、実は食べるように国を侵略するようなことを形容して表したものである。しかし本書はそのままの意味で、食べ物・飲み物がたくさん出てくるエッセイ集である。 しかし取り上げられる「飲み物」「食べ物」は日本だけではなく世界中のおいしい飲み物・ […]

選ばれし壊れ屋たち

「壊れ屋」という言葉を初めて聞いた。それに近しい言葉とすると、政治家の小沢一郎の異名である「壊し屋」というのがある。 それはさておき、本書は新人作家がどのように新たな作品をつくっていくのかを描いた作品である。新人作家が通る道として次回作を描くために東奔西走、試行錯誤を行うような場面があるのだが、その試行錯誤の中で編集者から出された宿題がなんとも奇想天外なものである。新境地を開くためなのかもしれない […]

ちちんぷいぷい

本書のタイトルにあるようなおまじないや呪文をかけた方は少なからずいると思う。自分自身もそういった呪文をかけたことがあるのだが(あくまで幼稚園の時代の話である)、本書はそういった呪文を題材にしているのではない。 ではどのようなものかというと、東京の片隅に生息している幽霊50体といった方が良いのだろうか。しかし幽霊と言っても、誰にも知られることのなく、陰湿な佇まいの印象を持ってしまうのだが、自分自身が […]

ファミリー・レス

「○○レス」という言葉をよく聞くのだが、家族の存在が無くなると言った「ファミリー・レス」を取り上げている。家族との憩いの時間が無くなる、あるいは家族の団らんや会話のないようないわゆる「仮面家族」のような印象を持ってしまった。 しかし本書は家族と言うよりは「偽りの家族」と言った方が正しいのかも知れない。というのは夫婦や血縁関係の親子ではなく、単純に親子くらいの年の離れた他人、あるいはよくいる夫婦と同 […]