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作家

半逆光

人を好きになってしまうことに、解などない。本書帯より 「好き」といった感情があるとするならばその通りかも知れない。しかし解の中には倫理的に、社会規範的に許されざる「好き」があることもまた事実としてある。その一つとして「不倫」が挙げられる。とある俳優が「不倫は文化だ」といった発言で騒動になったことは一昔前の話になるのだが(後に本人が否定した)、実際に不倫をした・されたとなるとどのような感情になるのだ […]

食っちゃ寝て書いて

周囲から見ると、ぐうたらしているような毎日のように見える人もいる。本書の表紙は物語に出てくる売れない作家の日常を表した挿画である。 もちろんこれが作家の全てではない。小説を描くとなると、作品によっては、近頃は新型コロナウイルスの影響により、どうなっているのかは定かではないが、取材として多くの場所を巡る、あるいはインタビューを通して題材を集めると行ったことを行う方々もいるため、一概には言えない。 ま […]

有島武郎――地人論の最果てへ

有島武郎(ありしまたけお)は「カインの末裔」や「或る女」など多くの作品を残した小説家である。小説家の中では学歴ではエリートであり、ハーバード大学にも進学したほどである(1年足らずで退学したが)。その有馬の生涯と、著作の傾向について取り上げたのが本書である。 第一章「二つの地/血から未開地へ」 有島武郎の親族は親こそ大蔵官僚でかつ実業家であるが、作家の里見弴、画家の有島生馬を弟に持つ。生まれこそ東京 […]

三島由紀夫 悲劇への欲動

私自身少し驚いており、元々岩波新書自体、三島由紀夫の思想とは真反対にあるような印象が強かったのだが、その岩波新書に三島由紀夫にまつわる本が上梓されるとは思ってもみなかった。 それはさておき、1970年11月25日に三島事件(「楯の会事件」とも呼ばれる)が起こり、三島由紀夫がクーデターを呼びかけた後、割腹自決を遂げた。この事件から今年でちょうど50年を迎える。 三島由紀夫と言えば、「潮騒」や「金閣寺 […]

皆川博子随筆精華 書物の森を旅して

私事ではあるのだが、私自身が書評を始めたのは2007年のことである。それから13年もの間、多くの本と出会うこととなった。数え切れないのだが、書評を行っただけでももう5千冊を超えている。本という書物に迷いながらも旅を続け、今に至っているのだが、この旅はまだまだ終わらない、もっと言うと一生終わらないかもしれない。 私事はここまでにしておき、本書は1970年代から約50年もの間文壇で活躍した皆川博子氏が […]

明るい覚悟 こんな時代に

著者はかつて文化放送のアナウンサーで、文化放送退社後は作家として活躍している。ありとあらゆる側面での作品を生み出してきたが、その著者は今年の1月で75歳を迎えた。75歳はきりが良いのだが、いわゆる「後期高齢者」の仲間入りを果たしたことになる。 これからの人生をどのように生きたら良いか、「老い」という避けられない要素が色濃く映り、なおかつ周囲の近しい方々が逝去する、あるいは病に倒れる中、自身も物忘れ […]

出家への道 苦の果てに出逢ったタイ仏教

本書の著者はあまりピンとこないかもしれない。ちなみに俗名の笹倉明(ささくらあきら)という名前を聞くとピンと浮かぶ方もいることだろう。それもそのはず。「漂流裁判」や「遠い国からの殺人者」「昭和のチャンプ―たこ八郎物語」で有名で、そのうち「遠い国からの殺人者」で第101回直木賞を受賞した作家である。 その笹倉氏が2005年にタイに移住し、2016年にパンオン寺に出家したという。なぜ出家したのか、そして […]

歌人の行きつけ

よくあるものとして芸能人の行きつけや、本でも文豪の行きつけといった飲食店の紹介に関する本がある。もっともそれらの飲食店には様々なエピソードがあり、なおかつ文豪に至っては、小説などの作品を生み出すための糧として行きつけにしているケースもある。 本書は中でも「歌人」たちがゆかりとなった飲食店が紹介されている。レストランや小料理店、さらにはカフェやバーなど様々であるものの、中には歌人のみならず、先述の文 […]

人生パンク道場

本書は著者自身へ寄せられた悩みについて答えると言う、人生相談的一冊である。先日も天龍源一郎の人生相談に関する一冊を取り上げたのだが、本書は作家の立場から答えている。 もちろん人生相談の中には面白おかしく答えるというのがあるのだが、本書はタイトルにあるように「パンク」は音楽に関するジャンルであり、「パンク・ロック」と呼ばれる。もっともその音楽はアメリカにて産声を上げたのだが、アメリカの影響を受けて、 […]

繁栄の昭和

昭和は元号の中で最も長くあった。その時代は大東亜戦争といった戦争を乗り越え、敗戦の悲しみに打ちひしがれても、経済的な復活を遂げ、現代における技術が次々とできはじめた時代であった。そのため大東亜戦争後は本書のタイトルにある「繁栄」と呼ばれる時代であった。 その時代を生き、活躍した方々は数多くいるのだが、その著名な人物の一人として小説家であり劇作家である筒井康隆もその一人である。「時をかける少女」や「 […]