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小説

カルチャーセンター

本書のタイトルを見ると、同名のサービスがあり、それが全国にて趣味、文化、生涯学習などを展開している所である。ちなみに本書の舞台はと言うと、その流れを概ね汲んでいるように見えて、異質な雰囲気を漂わせている。 それは小説のカルチャーセンターで、未発表小説を描いたとある主人公が、実在する作家・編集者たちからコメントが寄せられ、しかも作者本人にまで言及されるといった異色の物語である。小説家が小説の登場人物 […]

彼岸花が咲く島

流れ着いた島は日本なのか、それとも別な国なのかはわからない。しかし本書のタイトルのように、彼岸花が咲き乱れる島だった。そう考えるとあたかも三途の川が流れているイメージがあるのだが、その島に住む人びとはちゃんと生きている。 しかしながら島はある種「隔絶」といった言葉が相応しいのかもしれない。というのは住んでいる人は全て女性であること。その彼岸花をもとに麻薬をつくり、交換物資として隣国の貿易要素として […]

弊社は買収されました!

「会社買収」は今となってはごく当たり前に起こっている。しかしその当事者になってくると、どのような動きになるのかわからない人も多い。 本書はとある石鹸会社が外資資本に買収された会社の悲喜こもごもを描いている。「買収」と言ってもどのような買収なのか、また買収された後はどうなるのかによって会社の雰囲気も変わってくる。しかし本書は「突然」と言った言葉がつきまとう。社員の多くはニュースを見て始めて買収のこと […]

私はあなたの記憶のなかに

本書は表題作を含めて全部で8編収録されている。元々著者は長編も描くことがあるのだが、元々のホームグラウンドは短編と言えるほど、短編の作品が数多くある。それ故か小説雑誌にも度々取り上げられている。本書で収録されている作品も過去に雑誌にて取り上げられているものばかりである。 しかし「取り上げられている」と言ったが、初出が古くて1996年、新しくて2008年とどちらかというと古いものばかりである。とはい […]

少女を埋める

「自伝的小説」はこれまで何度も読んできたのだが、著者の小説は自ら「社会」に対して、「メディア」に対しての苦しみが映し出されている。コロナ禍に伴っての帰郷と、その故郷での絶望と脱出が描かれている。 本書にて描かれている物語は著者自身のインタビューなどで度々取り上げられていた故郷や家族についてが中心となっている。もちろん「自伝的小説」のため、主人公像は別の人であるのだが、中身は著者自身である。 私自身 […]

私は女になりたい

「女になりたい」と言っても、もう過ぎてしまったが下の動画のことではない。 本書の主人公は紛れもなく女性。しかし妻や母を卒業し、一人の女として活きていくことになる。その主人公は47歳。女盛りという年かという声もあるのだが、「女盛り」自体は年齢によって決まるものではない。 「思い立ったが吉日」と言うように、中年であっても、高齢であっても、思い立ち、自ら一人の「女」として生きることはどのようなものか。そ […]

あの日の交換日記

「交換日記」自体、現在あるかどうかはわからないのだが、私が学生だった当時はごくわずかだったとはいえやっている人たちがいた。どんなことを書くのかというと、何も日常的な事を書いただけとのこと。今となってはメール、さらにはLINEなどのチャットなどもあるため、デジタルの面で交換日記ができるにはできるのだが、その必要がないほど、コミュニケーションツールも進化している。 コミュニケーションツールが進化すると […]

ふりかえる日、日―めいのレッスン

物語は、突然の出来事などから起こることもあれば、何気ない日常からも生まれる。特に何気ない日常の中にも多少なりの「変化」があるのだが、その「変化」のあり方が、日々の物語を紡いで行く。 本書は主人公の姪が日々触れるあらゆるものに耳を澄ませて成長して行くと言うものである。五感のうちの「聴覚」によって春夏秋冬を描き、なおかつ物語として織りなしていく所に魅力がある。 ショートショート形式にて描かれており、タ […]

女性失格

恥の多い生涯を送ってきました。p.8より 本書は上記の言葉から始まる。もっとも本書は女性の深淵を太宰治の名作「人間失格」をベースにしているため、本書の構成も含めて「人間失格」のものになっている。そのため冒頭も「人間失格」と全く同じ言葉が使われているわけである。 さて、本書における女性の「深淵」を手記にして描いている。もっとも女性でしかわからないものもあれば、女性でもわからないものまである。男性であ […]

株式会社タイムカプセル社 十年前からやってきた使者

人生は何が起こるかわからない。うまく行かない時もあれば、捨てたものではないと思う時もある。 本書は仕事も家庭も全て失った男性が一風変わった会社に働くようになる。しかもその会社名が本書のタイトルにある会社である。その会社は場所・時間を跨いで、手紙の配達を行う会社である。しかも男性が所属するのは配達不能になった人たちの手紙を直接届けるというものである。その先々で受取人たちと出会うことによって、男性の考 […]