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小説

雨の日は、一回休み

「おじさんだってつらい」 この言葉がどうしても頭から離れられない一冊である。「男女雇用機会均等法」が施行される前はおじさんたちは頑張れば活躍できる土壌があった。しかし先述の法律が施行され、また社会的な風潮が変わってからは、実力などが伴わなければ、淘汰される。それは「おじさん」とて例外ではない。 本書はそのおじさんの悲哀を5編描いている。方やセクハラ疑惑をかけられ四苦八苦し、方や女性後輩と昇進争いに […]

レーテーの大河

舞台は大東亜戦争終結後から1964年の東京オリンピックにかけての期間を描いている。特に終戦直後の混乱の中で日本・満洲における激動の中で「戦災孤児」として生きてきた3人、そして関東軍として満洲に赴いていた日本兵2人が本書の主軸になる。 戦後の激動の最中で行われたとある「任務」を巡り、様々な出来事に巻き込まれる。それが東京オリンピック開催までの約20年にも及ぶ長い闘いだった。しかもその「任務」は「戦争 […]

ないものねだりの君に光の花束を

人には何かしらの「個性」がある。しかしその「個性」を否定するか、あるいは気づかないといったこともあり、そのことによって「自分には『個性』がない」と否定的に見てしまう人も少なくない。そのような人となると、かくいう私も昔はそうだったのだが、相手に対して個性の「ないものねだり」をしてしまう傾向にある。 本書は個性が無いと思ってしまい「ないものねだり」をしてしまう女子高生。しかも自分はずっと「脇役」だと認 […]

情熱の砂を踏む女

スペインは「情熱の国」というイメージがあり、なおかつステレオタイプのイメージとして「闘牛」がある。現にスペインでは年数十回バルセロナの「ラ・モニュメンタル」という闘牛場で、行われている。 闘牛自体はスペインに限らずポルトガルやフランス、さらには形は違えど日本でも行われているが、「闘牛」というと「スペイン」というイメージがつよい。もっとも歴史的にも中世から行われた記録があり(諸説ある)、多いときには […]

恋に焦がれたブルー

「一途」と言う言葉がある。調べてみると、 一つのことに向かい、他をかえりみないこと。ひたすらなこと。ひとすじ。「広辞苑 第七版」より とある。一つのことに対してひたむきに頑張る人・ことをさているのだが、本書は恋に、そして靴にと、ひたむきに向かう姿を描いている。その恋の相手は同じ学年の女子高生。ボロボロの靴を履き、友達もおらず、笑顔も無かった。しかし一途な男子高校生との出会いで変わっていった。 また […]

幾千年の声を聞く

不思議な一冊である。本書の冒頭を見るとオンラインゲームのスタートが出ているため、ファンタジーか何かのゲームを描いているのかと思ってしまう。もっともキャラクター・舞台背景・時代設定においてもどうもファンタジーのようでいてならなかった。 しかし本書を「不思議」たらしめる所なのか、各章の冒頭にて「定時観察報告」がある。ファンタジーのような展開を見せている一方で、「定時観察報告」の中に、登場人物ですら想像 […]

繭の季節が始まる

「繭の季節」と言うタイトル自体が、少し前の世相を見ているようでいてならなかった。一昨年の3月から始まった新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、「自粛」が次々と行われ、ステイホームまであり、巣ごもりを行っていくようになる。あたかもそれが虫における「蛹」「繭」の様であるかのように。 そのような中で「事件」が起こり、その解決に乗り出すというのが本書である。ミステリーであるのだが、当時の世相をふんだんに盛り […]

その果てを知らず

著者の眉村卓氏はSF小説を長らく描き続けてきた。その眉村氏の最期の一冊と言えるのが本書である。60年以上前にあるサラリーマンが小説の道を歩み出し、SF小説を描き始めた。やがてサラリーマンを続けながら作家人生を歩んでいった中で彼は何を見いだしたのかを描いている。 もっとも本書は「自伝的小説」とも言えるものである。主人公や境遇こそは架空であるものの、著者自身も元々は大卒後サラリーマンとなり、その中でS […]

永遠の仮眠

本書の中身に入っていく前に、本書の著者の話を行う必要がある。著者は小説家としてのデビュー作が本書であるのだが、そもそも著者自身が昨今のJ-POPや歌謡曲などのプロデューサー、さらには作詞・作曲家、音楽評論など、音楽畑で長らく活躍を行ってきた。その著者が初めて音楽以外の分野にて「小説」として刊行した。 ちなみに本書は著者の音楽人生の部分の中で描いた一冊である。よくテレビドラマにも「主題歌」があり、そ […]

アポカリプスの花

区役所に住む主人公の女性は恋人と同棲し、順風満帆の日々を送っていた。しかしその日常の中で仕事・家両方で謎の現象が起こり、主人公を苦しめた。しかしその現象は主人公しか見えず、恋人や仕事の同僚を含めどの人もわからない。「幻覚」に陥っているのではないかと言うような状況が続いた中、恋人をよく知る男性が現れた。 現れたと同時に恋人がいなくなり、あたかも幻覚と呼ばれる「違和感」がさらに広がっていく。その要因と […]