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文庫

鬼同心と不滅の剣 牙貸し

江戸時代における身分の一つに同心がある。現代で言う所の警察官であるが、その中でも町の奉行所の中で見回りや軽い犯罪の取り締まりを行う役割を担っている。最近でも見かけることがあるのだが、地元の警官がパトカーや自転車、あるいは白バイ、徒歩でパトロールをする役割と考えれば良い。 前置きが長くなったが、本書は江戸の大伝馬塩町(おおでんましおちょう、現在の東京都中央区日本橋本町四丁目)の長屋で賊に襲撃される事 […]

護られなかった者たちへ

日本国憲法には第25条に「生存権」が定められている。条文を見てみると、 第1項:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 第2項:国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。 とある。それを守り、実行するために「社会福祉制度」ができ、さらに見ると「生活保護」などのセーフティネットがある。しかしその制度の行使によっては解釈 […]

悪い女 暴走弁護士

ある事件を起こして、通報する。その後に自首して逮捕されるといったニュースを見ることが時々ある。本書はそういった事件を描いているのだが、深層はかなり深い。 よくある保険金殺人を描いているように見えて、夫や家族に対する愛憎もあれば、事件を起こした苦しい事情、そして裁判にて明かされる事実と闘いと、事件と弁護、さらには裁判に至るまでのプロセスにて次々と明かされていくのだが「動機」が一番のキーとも言える。 […]

食いしんぼう同心 謎を食らわば皿まで

幕府における下級役人を総称して「同心(どうしん)」と呼んでいる。本書は奉行所で随一の切れ者と称される同心と、食に目がない、ある種水戸黄門に出てくるうっかり八兵衛のような同心見習いの2人が事件を解決するという一冊である。 方や同心は切れ者である一方で真面目さが性分であるが、もう片方は食べものに目がなく、ある種おちゃらけているように見えるが、事件などの解決になると、同心に引けを取らないほど真剣さを見せ […]

三叉路ゲーム

「三叉路(さんさろ)」とは、 道路のみつまたになっているところ。「大辞林 第四版」より とある。よく道路では「Y字路」がそれにあたる。この三叉路自体は道路でも出てくるのだが、物語においても「分岐点」という扱いで使われることも多い。 本書で言う「三叉路ゲーム」もまた、誘拐事件を発端として犯人からの指示にて、選択を迫られることの連続となる。それがあたかも分岐であるかのように。 犯人は事件を追う警察に対 […]

ウィザードグラス

当ブログの記事をつくる際はよくPCを使う。記事を作る中でわからない用語や調べる必要があるデータはよくGoogleを使って検索を行う。その検索の中には「履歴」が残り、私自身の知りたいこと、過去に調べたものなどリアルタイムしらべるひつようがあるで「記録」される。その記録を他人が見たらとなるとゾッとする。 そのゾッとする物語が本書である。本書は他人の検索履歴を見ることができるAR機器を巡った一冊で、名前 […]

恭一郎と七人の叔母

母子が実家に住んでいるが、その母は8人姉妹で、主人公である子供には7人の「叔母」がいることになる。しかもその叔母たちの中には夫や子もおり、同じ実家で暮らしており、さらには子供から見て祖父母・大叔父・大叔母、曾祖父とみるからに大家族であり、なおかつ何人暮らしかとさえ思ってしまう。 人数的な意味で騒々しい家族の悲喜こもごもを描いたのが本書である。ハートフルなストーリーでもなく、家族のいざこざでもなく、 […]

作ってあげたい小江戸ごはん たぬき食堂、はじめました!

埼玉県川越市は、俗に「小江戸」と呼ばれ、有名である。そもそも「小江戸」とは「小さな江戸(東京)」というよりも、江戸時代のような風情があり、その風情によって栄えている待ちのことを指す。江戸時代にて、 世に小京都は数あれど、小江戸は川越ばかりなり と謳われたことから、「小江戸=川越」という印象がつけられている。それ故か、地ビールには「COEDOビール」、閉鎖された施設として「小江戸横丁」もある。 その […]

悪い夏

本書は生活保護の受給者、そしてその方々の経済自立を図るためのケースワーカーの物語である。もちろんその生活保護の受給者の中には「不正受給」を行っている人も少なくなく、本書ではその中でもタチの悪いような人ばかりである。 しかも「人の縁」はその人自身を変わらせてしまうと言うが如く、ケースワーカー自身も生活保護に陥ってしまう。ごく普通の人間が悪い人間に触れていくことで染まってしまうかのように。 そういった […]

エミリの小さな包丁

仕事・恋愛・お金と全て失った女性が、母方の祖父母夫婦に手を差し伸べてくれて、田舎に引っ越すことになった。女性は傷心もあれば、田舎の環境になじめず、戸惑いもあったのだが、祖父母夫婦がつくる料理に触れ、自らも料理をつくることによって癒やされるという物語である。 しかし田舎の環境、そして祖父母夫婦がつくる料理には、その環境でしか味わえない味と愛情がぎっしりと詰まっているようでならなかった。また料理には身 […]