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文庫

蕎麦、食べていけ!

著者の江上剛と言えば第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、日本振興銀行と銀行畑を歩み、その経験から金融関係、さらには経済関係、サラリーマン関係の小説を多数出している。そう考えると、本書の小説は異色中の異色と言える。 本書の舞台は高校生からの町おこしである。しかし実際に観てみると金融や経済の要素が散りばめられており、題材が異なれど、著者自身が培ってきた経験が活かされており、金融機関の役割、そして最近でも話 […]

爽年

石田衣良氏の「娼年」シリーズの一作である。「娼年」シリーズはボーイズクラブのオーナーとして男女関係を描いている、どちらかというと「官能」と呼ばれる表現が多い。表紙ではそのようなイメージではもたれないのだが、中身を見ると、けっこう官能的な表現が多かった。とはいえ「恋愛」となると官能的な部分は少なからずあることはわかるのだが、よくある官能小説と、性的表現が使われる恋愛小説とを比べると、本書はその「中間 […]

増補版 大平正芳 理念と外交

ご存じの方は今となってそれ程多くないものの、大平正芳は昨今の日中・日韓の国交を築いた人物であり、なおかつ保守政治家の大家であった。通称「アーウー宰相」や「讃岐の鈍牛」と言われ、なおかつ知性派として辣腕を振るった。しかしながら自民党の分裂による解散により首相のまま逝去したとも知られている。 生誕して110年、没して40年というちょうどの節目に大平正芳の生涯を追っているのが本書である。 第1章「「楕円 […]

アルテミオ・クルスの死

本書は今から8年前に逝去したメキシコの作家カルロス・フェンテスの代表作の一つであり、ラテンアメリカ文学のブームの火付け役となった一冊である。 上梓されたのは1962年であり、それが日本語訳されたのはその23年後にあたる1985年。それから何度も翻訳され、本書の様に昨年に再翻訳された。 本書はメキシコ革命の経験を経て、経済界を生き抜いた男アルテミオ・クルスの生涯を描いた一冊である。そもそも本書が描か […]

話術

「話術」と言う言葉があるのだが、私に取っては縁遠いものである。もっとも私自身口下手で、なおかつ会話によるコミュニケーションが下手なのだから。 それはさておき、本書は1947年に刊行されたものを復刻した一冊である。大正時代からは活動写真やサイレント映画で物語を話す「弁士」になり、トーキー映画がでて、弁士の需要が少なくなってくると、今度は漫談家として活躍した。長い人生の中で弁をたたせる仕事に就いたとこ […]

あなたは、なぜ、つながれないのか―ラポールと身体知

人とのコミュニケーションが苦手な人は少なくない。かくいう私もその一人である。もっとも私自身どのようにコミュニケーションをしたら良いのか分からない人である。原因は様々であるのだが、そのコミュニケーションがうまく行かないことから「生きにくさ」と言うものを感じることさえもある。本書ではその生きにくさを脱するためにコミュニケーションとは何か、それを通じて他人と深く理解しあうためにはどうしたら良いかを伝授し […]

パレードの明暗―座間味くんの推理

警視庁の架空の機動隊に配属し、保安検査場に勤務している女性は仕事に不満を感じたのだが、警察官としての仕事に誇りを持っていた一方で、仕事や上司について自分の理想をあまりにもかけ離れたことにいらだちを覚えた。 その上司からあるとき、とある飲みに誘われることとなった。その飲みは警視長と呼ばれる警察のなかでもトップに分類する人の飲み会である。ある種の「接待」というイメージを持たれるのだが、そのトップとの飲 […]

19歳の連続射殺魔 永山則夫事件と60年代

本書の事件が起こったのは1968年のこと。今から51年も前の話である。当時の日本はと言うと当時は東大を始めとした大学紛争が行われた年でもあり、世界に目を向けてみると「プラハの春」など象徴的な事件・出来事が立て続けに起こった年でもある。本書で取り上げる「永山則夫連続射殺事件」も象徴づける事件であるのだが、事件の内容もさることながら、司法の場において「永山基準」の慣例がつくられるきっかけとなった事件で […]

今日われ生きてあり―知覧特別攻撃隊員たちの軌跡

鹿児島県知覧町には「知覧特攻平和会館」がある。大東亜戦争の際に帝国海軍によってつくられた「神風特別攻撃隊」、通称「神風特攻隊」が編成された場所である。その特攻隊の隊員となり、散っていった方々がどのようなもの・ことを遺していったのか、その記録が詰まった一冊である。 第一話「心充たれてわが恋かなし」 特攻隊員としての日々、そして日本のために死ねるという誇りと悲しさ、そしてその特攻隊員の家族たちの心境が […]

アラブ音楽

中東から北アフリカを総称して「アラブ」と呼ばれることがある。その地域でつくられた文化を「アラブ文化」、そして音楽は本書にて紹介する「アラブ音楽」である。アラブ音楽はあまり聞いたことがないのだが、この前に久々に聞くと、独特な感じがしてならなかった。もっともクラシックなどを中心とした西欧の音楽、独特の間や情景を生み出す東洋の音楽、その間にあり、それぞれの音楽を取り入れつつ、アラブならではの独自の音楽を […]