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戦前

身分帳

元々本書は1990年に刊行され、1993年に文庫化された。初めて刊行されてから30年後の2020年に本書を原案とした「すばらしき世界」にて映画化されたものである。 そもそも「身分帳」は実際に存在しており、拘置所に入所した人(容疑者・被告人など)の態度や経歴などが記載されている書類のことを表している。問題を起こしたり、面会を行ったりと、事細かに記されている。しかしどれだけ細かく書かれるかは拘置所のあ […]

沢村栄治 裏切られたエース

プロ野球の賞の一つに「沢村賞」がある。これは先発投手の中で最も活躍した人に与えられる賞である。この「沢村」は本書で取り上げる沢村栄治からとられている。戦前のプロ野球界に燦然とした活躍をしながらも、大東亜戦争にて戦死した沢村。その沢村の野球観現在も行われているプロ野球(本書では「職業野球」と記載している)の初期の歴史を取り上げている。 第1章「沢村栄治と正力松太郎」 沢村は1917年三重県に生まれ、 […]

流言のメディア史

本書は昨年出版されたのだが、今を指し占めたような一冊と言うほかない。というのは言うまでも無いのだが、昨今新型コロナウイルスによるニュースが大量に出ているのだが、その中には流言(デマ)と呼ばれるようなニュースが沢山存在する。なぜ流言は生まれるのか、それを紐解いてみると、そもそもメディアと「流言」自体は長いつき合いにある。そのあらましとこれからについて取り上げているのが本書である。 第1章「メディア・ […]

矢内原忠雄――戦争と知識人の使命

時計台のある東京大学の駒場Ⅰキャンパスには「矢内原公園」があり、かつては矢内原門があり、その門があったことの石碑が今もなお存在する。その「矢内原」こそ、本書で紹介する矢内原忠雄である。東京帝大(現:東大)の政治学科卒業後、就職を経て、東京帝大に戻り、学名が東大になってからもずっと教授として教鞭を執り続け、戦後には大学の学長にあたる「総長」にまで登り詰めた。 しかしながら研究や主張によっては物議を醸 […]

戦前日本の安全保障

日本における安全保障法案の改正が9月17日に参議院で可決し、成立した。しかし現在でもそれに反対する方々が訴訟の準備を始めており、まだまだ安保の火はとどまるところは知らないといえる。 しかし日本の安全保障は戦後から作られたわけではなく、大東亜戦争以前から存在していたという。本書は戦前の中でも「第一次世界大戦」の時期から、大東亜戦争にかけてどのような安全保障を行ってきたのか、そのことについて取り上げて […]

「李香蘭」を生きて

今年の9月7日、李香蘭こと山口淑子が94歳という年齢でこの世を去った。戦前~戦中ではアジアの大女優・大歌手、そして晩年は国会議員として活躍した重要な人物が失ってしまったことになる。戦前から戦中の歴史を紡いできた「李香蘭」はいったいどのような思いで演じてきたのか、そして戦後の人生の中で影響を及ぼしたのか、自ら綴った一冊である。 第一章「「李香蘭」誕生」 李香蘭こと山口淑子は1920年当時「中華民国」 […]

「肌色」の憂鬱 – 近代日本の人種体験

「F1にイエローはいらない」 これは1986年のF1イタリアGPで、当時国際自動車スポーツ連盟(FISA)の元会長だったジャン=マリー・バレストル氏が当時F1におけるホンダエンジンの総監督だった桜井淑敏氏に向かって言われた言葉である。人種差別的な発言だが前後すると当時はホンダエンジンが席巻し、バレストル氏の母国であるフランスのルノーエンジンが不振だったという事情があり、その恨み節としてこの発言がで […]

「昔はよかった」と言うけれど~戦前のマナー・モラルから考える

「昔はよかった」といいう言葉は今の現状を憂う、あるいは現在に生きる世代を批判する際に比較対象として用いられる常套句として扱われるのだが、よく考えてみると「本当に昔は美しかったのか?」という疑問符が生まれてしまう。それに「昔」についてどれくらい前のことを表すのか、ということも考えると評価基準も大いに変わってくる。 本書は「昔」の基軸を戦前にしている。戦前は「修身」の授業もあれば、「教育勅語」という教 […]

冒険としての社会科学

当ブログは主に書評を行っているが、いくつかカテゴリーに分けての書評も行っている、ブログの左にあるカテゴリーを見ていただければ幸いだが、主に「人文」「社会科学」「理数系」「文芸・評論」「ビジネス」と分けている。私の読書傾向からこの5種類に分類しているが、私の所の「社会科学」は主に「社会問題」「政治」と言った本に分類している。前身の「蔵前トラック」でもそれらの類はずっと書評し続けているのでなじみ深いと […]

戦前・戦後の本当のことを教えていただけますか

本書は一昨年の3月に亡くなられた兼松學氏の戦前・戦後のことをつづっている。ちなみに兼松氏はこの当時は鉄道省に入省し、霞が関で大東亜戦争を体験した。そしてその後の日本の戦後のことについてありのまま話された。 第1章は戦前の暮らしについてだが、父の誇りと共に勉学そして遊びにがむしゃらだった少年時代から外国人と英語で論争、東京帝大時代から鉄道省に入る前までのことである。旧制中学というと現在でいう高校であ […]