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追悼

眼球達磨式

本書の著者は本作でデビューし、第58回文藝賞受賞を果たしたが、同年10月に事故で逝去した。そのためデビュー作であると同時に唯一世に出た作品となった。また本書の上梓自体も昨年11月を予定していたのが今年の3月に延期となるなど、違う方向で話題となった。 さて本書の物語はある種SFの要素も入っているような感じである。とある移動式カメラがコントロールから外れて自走することから物語が始まる。狭いアパートの所 […]

英もよう 女形ひとすじ 二代目英太郎の生涯

本書で紹介する人物は演劇、特に新派をご覧になる方々以外は馴染みが薄いかも知れない。劇団新派の俳優でありつつ、新派を越え、歌舞伎などの外部の公演でも女形を貫き、演じてきた。その俳優の名は二代目英太郎(はなぶさ たろう)である。新派では波乃久里子や二代目水谷八重子ら女優もいるのだが、男優でありつつ女形を貫いた数少ない俳優であった。2016年に逝去しているため没して5年経つが、英太郎がどのような生涯を貫 […]

人魚はア・カペラで歌ふ

今月13日、作家・評論家の丸谷才一氏が逝去された。88歳という大往生であったのだが、個人的にはもっと生きてほしい気持ちでいっぱいだった。 書評文化の繁栄を願いで創設された毎日書評賞、私が書評集を出し、その賞を受賞したとき、丸谷氏からその表彰を受ける姿を一途に思いつつ、書評を書き続けた。もはやその願いが叶わぬものと知った時は悲しさと空虚さが広がった。ただ、一つの思いがよぎった。丸谷氏が描き、大きくし […]