「一人で生きる」が当たり前になる社会

人は一人では生きられないと言ったことを聞いたことがあるが、それがだんだんと死語になりつつある。父と母の間で生まれ、様々な人に支えられるのだが、その後結婚することなく、生涯独身で人生を終えるといったケースも出てきており、最近では老後身寄りがなくなるケースもある。

「一人で生きる」は、「結婚」することなく、独身で生きることを指している。なぜ独身が進むのか、そして独身が増えていく中でどのように生きたら良いのかを本書にて示している。

第1章「ソロ社会化する日本」

よく「独身」のことを「ソロ」「シングル」といった表現を用いる。2020年度の国勢調査による統計にて「生涯未婚率」というデータがある。それを見ると男性が25.7%、女性が16.4%という結果だった(外国籍者数含む)

要因は様々であるが、多様化している結婚観もあれば、経済的な理由を挙げる事も考えられる。また未婚率解消に向けて、民間では婚活市場をあの手この手で拡大している。

第2章「孤独とは悪いことなのか?」

「生涯未婚率」が増大している記事を見ると、果たして「孤独=悪」と言えるのだろうか。これは完全にそうとは言えない。人それぞれに価値観があり、孤独を良しとする人も中にはいる。また「孤独」とひとえに言っても、進んで一人になる人もいれば、集団から排除されて一人になってしまう人もいるため、とらわれ方も異なってくる。

第3章「ソロの幸せ、既婚者の幸せ」

ソロでいることのメリットは何か、また結婚をすることのメリットとは何か。それぞれの立場から答えるのは難しい。そもそも「幸せ」を定義すること自体がそれぞれの価値観に依存しており、「一般的に」といった一元論では語ることが不可能である。

「幸せ」の他に本章では男性・女性それぞれの「ソロ」になる傾向なども取り上げている。

第4章「恋愛強者と恋愛弱者の生存戦略」

恋愛の世界でも強者・弱者があるという。「人づきあい」の側面もあるため、恋愛のみならず、友人・仲間づくりにも得意な人・苦手な人もいるため、そこに通ずる所がある。

しかしそれぞれの立場からの「生存戦略」が存在する。それはいったいどのようなものかを取り上げている。

第5章「ソロ化と集団化の境界線」

「ソロ」と「集団」。それぞれの立場において、どのような傾向があり、境目はどこにあるのか。本章ではそのことについて取り上げている。

第6章「自分とは何か――一人の人間の多様性」

人間の傾向は一括りにはできない。男性・女性、一人でいる人・友達の多い人など、区分けしていくだけでも多岐にわたる。家族、人生経験、価値観などの要素が相まって多様性が生まれる。

第7章「世の中を動かす「感情主義」のメカニズム」

人間には「理性」がある。しかし動物であることから「感情」も持っている。2つの要素のバランスによって生きている人間は、どちらを重点に置いているか。理性のように見えて、実は感情であるという。

一人で生きることは別に悪いことではない。しかしながら、それを選ぶ、あるいは選ばざるを得ない人とそれぞれの境遇から「一人」になっている。果たして「一人」「ソロ」は悪いことなのか。全体的に見ると人口減の温床となるため、悪いことかも知れないが、一人一人の立場を見てみると決して悪いこととも言えず、「当たり前」と思う人さえいる。その現状を浮き彫りにしていた一冊と言える。