Googleの正体

株式会社毎日コミュニケーションズ様より献本御礼。

Googleといえば世界最大の検索ツールであると同時に、インターネット広告の最大手である。検索ツールに関しては昨今で「Google八分」、最近では中国当局との対立も様々なところで報道されている。

本書は新しいビジネスモデルを構築しながら急成長を遂げているGoogleの実像とこれからについて書かれている。

第1章「不気味なグーグル」
「100年に一度の恐慌」と呼ばれる時でも確実に利益を上げ、企業自体も成長を遂げているGoogleであるが、あまりの急成長に「闇」があるのではないかと疑う人も少なくない。現にGoogleにそぐわないようなサイトは検索からはずされる「Google八分」がある。
Googleの「闇」も確かに不気味なのだが、それ以上に不気味なのが「YouTube」や「Google Earth」といったきわめて先進的なものは収益制がなく、赤字続きであり、採算の見通しが立っていない。それでもGoogleとしてそれらから撤退せずに維持し続けていること自体「不気味」と言える。

第2章「富が湧き出す仕組み」
Google最大の収入源は何と言っても「広告」である。インターネットが誕生したてのころまでは街頭や新聞・雑誌・TVが広告の主流であり、それらの業界は広告収入だけで潤沢な利益を得ることができた。これまではDMや電車の中吊りや巨大看板などが挙げられる。しかし新宿や池袋などで「広告募集中」の看板が目立ち始め、「白き街」の様相である。
Googleの広告戦略により、既存のマーケティングにとらわれておらず、よく使われる「AIDMA」も「Search(検索)」や「Share(共有)」に変えられ、「AISAS」という風にGoogle内で使われている。

第3章「拡大・成長のための最大の戦略」
第2章でも語ったとおり広告収入が莫大であるGoogleはわざわざ利益にならないYouTubeやGoogleEarthを手放さないのか、有料広告が主体であるがこの広告戦略自体もGoogleならではの戦略がある。検索機能を利用して、人気検索ワードからどこのワードで、そしてどこの位置で広告を出したらを計算し、収益を上げている。しかも数十円から春子とができ、当然インターネット上にて全世界に広告を表示することができるため、広告効果が高いこともその要因の一つとして上げられている。そのためYouTubeやGoogleEarthが軌道に乗らなくても痛くも痒くもない訳である。

第4章「成り立ちから読み解くグーグルの姿」
ここではGoogleの歴史を紐解いている。Googleはインターネットが普及しだした頃、ウェブのリンク分析によって生まれたものであり、営利企業にするつもりもなく、ましてや広告も「悪」だと思っていたという。今の状態では考えられないものである。
しかし「検索エンジン」のビジネスは当時、完全な「ブルーオーシャン」であった。しかし実業家の出会いにより広告のビジネスに進出し、急激に勢力を広げていった。
Googleという検索エンジンの最大の利点は「表現の自由」にある(ただしGoogle八分があるのだが)。しかし共産党一党独裁国家である中国では検閲がかけられ、撤退騒動にまで陥っている。広告業態やマーケティングに新たな風を吹かせたのだが、「表現の自由」という名の十字軍が征するのか、あるいは中国に失望するのか、どちらになるのだろうか。

第5章「グーグルと私たちの未来」
とはいえ「Google」にある「表現の自由」という名の十字軍は必ずといっても有益なものではない。昨年の「グーグルブック」騒動がある。出版物の著作権が侵害されるということでGoogleに対し訴訟を起こそうとしたというものがある。和解案がいくつも出てきているが、未だ解決に至っていない。
話は変わるが現在Googleは貧困や代替燃料、無線LANにも興味を示している。ネットからリアルの世界に直接影響の与える企業になろうとしている。

Googleは従来のマーケティングを覆し、新しいビジネスモデルを構築したばかりではなく、インターネットの世界に多大なる影響を及ぼしたといっても過言ではない。しかし天下は長く続くわけではない。これからGoogleはどの分野に進出するのか、どのように変わっていくのかはわからないが、行く末が楽しみである、といった方がいいのかもしれない。