森林飽和―国土の変貌を考える

森林破壊が著しく、それが環境破壊の象徴といわれている。その対策の一つとして「植林」をする事によってもとの緑の森に戻そうとする働きかけも多い。

しかしその「植林」が森林破壊とはまた違った「環境破壊」を被るのだという。本書ではその緑化に対する「副産物」と呼びタイトルのような「森林飽和」と定義しているが、その「森林飽和」の悪影響について取り上げつつ、その対策も提示している。

第一章「海辺の林は何を語るか」
2011年3月11日の「東日本大震災」では東北・北関東を中心に家屋や自然、家畜、人と甚大な被害を受けた。
木々もその例外に漏れないが、木によって易々と折れた木もあれば、津波をも耐え抜き、さらにくい止めた木もあった。後者は主に「マツ」の木であり、その木が群がる「マツ林」と呼ばれる林のある海辺のあるところには甚大な被害を受けずに耐え抜いたという。

第二章「はげ山だらけの日本」
森林破壊の象徴としてあるのが「はげ山」であるのだが、その「はげ山」は戦後、急激な開発によって森林破壊されたと言われているが、戦前から森を資源として利用して、じわじわとはげ山になった山もある。戦前どころではなく、江戸時代の頃からすでに「はげ山」となった山も存在したことを本章で指摘している。

第三章「森はどう破壊されたか」
では「森」はどのようにして破壊されたのか。第二章でも同じようなことを言ったのだが、戦後に急激に森林が少なくなったのではなく、それ以前も森林破壊はあった。そのピークとなったのが明治時代であるという。

第四章「なぜ緑が回復したのか」
第三章で破壊された森であるが、その森林破壊を嘆き始められたのが明治時代、東京帝国大学(現:東京大学)教授の志賀泰山が論文で森林の分析を行い、少ないことを嘆いたことが始まりとされている。
その論文をうけ、政府は森林の保全・保護を目的に林業を強化したと言われている。
そこから林業が延び始めた矢先、日清・日露戦争と木々の需要が増えていった。その需要がもっとも多かったのが戦後、植林と伐採の両輪を急速に回していったがために里山が疲弊したという。とはいえ驚異的な復興のために、木材の需要は高かったことにより、早い循環で森林は変わっていった。
やがて経済成長も踊り場にさしかかった頃から木々の需要は減少していった。

第五章「いま何が起きているのか」
本書の核心といえるところである、緑化による副作用は箇条書きにすると、以下のものが挙げられる。

・土砂災害(表層崩壊から深層崩壊へ)
・水資源の減少
・花粉症

とりわけ最後のところは深刻であるという。

第六章「国土管理の新パラダイム」
その森林飽和を解消するための方法、それは一言では言い切れないが、その場所本来ある環境に合わせて、植林や森林利用、そして「守る森」と「使う森」を分別する事が大切であるという。

何もかも「植林」すれば良いと言うものではない。むしろ森林の問題の解決は一筋縄ではいかず、植林するだけで良いほど単純なものではない。本書はそれに警鐘を鳴らした一冊と言える。

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