「環境問題」と一括りにしても様々な問題があるが、新聞・TVで取り上げられる環境問題はその氷山の一角に過ぎない。
本書で紹介する「海ゴミ」も少数ながらメディアで取り上げられるが、あまり熱心に取り上げられていないものである。この「海ゴミ」の問題は地球環境もさることながら、生態系への悪影響、さらには、国内外の事情など複雑な要素が絡んでおり、解決までの道のりは険しく、かつ遠いが看過できない問題でもある。
本書はその実態を表すとともに、「国際海岸クリーンアップ(International Coastal Cleanup:以下、ICC)」の取り組みと課題についても取り上げる。
第一章「日本中の海岸に「ごみ」が漂着する」
冬の海は夏とは違い、閑散としているイメージがある。人がいるとしても、冬の海を眺める人もいれば、サーフィンをする人くらいであろう。
その海岸にはごみがちらほらと存在する。それらは「漂着ごみ」と呼ばれているが、その定義については第二章にて詳しく書くこととして、日本中の至る海岸でそういった「漂着ごみ」が散乱している。世界遺産に認定された知床半島、江ノ島海岸など日本の至る所で、ペットボトルや発泡スチロール、漁網、さらには注射器など危険なものまである。
第二章「漂着ごみとはなにか」
では、「漂着ごみ」とはいったいどのような定義なのだろうか。人間が河川にごみを捨て、それが海へと渡り、漂流し、そして海岸へと流れ着いたごみのことを指す。発生源は「陸上」であるが、世界中の陸上で行っているだけあり、日本で河川のポイ捨てを取り締まっても効果は薄い。そのため一筋縄ではいかないのがこの「漂着ごみ」問題である。
第三章「大量のごみが国を越えて移動する」
日本に関わらず世界中の海岸でも出てきている「漂着ごみ」。第一章にあるように日本各地で漂着ごみが流れ着いているのだが、そのごみは第二章のように世界各地からきたごみである。本章ではライターを例にどこからきたのかを判別している。
第四章「「漂流ごみ」が海洋生態系を危機に陥れる?」
本章は巻頭の写真と共に見た方が良い。本章ではアシカを取り上げているが、海鳥やアザラシ、カモメ、アホウドリなどが漂流ごみにより窒息死や餓死、あるいはごみによっては毒死もある。もし死ななかったとしても繁殖力の減退など生態にも悪影響を及ぼしている。
第五章「漂流・漂着ごみに対処する法律・制度」
昨今ではボランティアにおけるごみ拾いによって処理費用がかからない条例が地域によってあるのだが、国単位では「海洋汚染防止法」によって海へのごみ投棄は禁止されている。国際法でも「ロンドン海洋投棄条約」などいくつか存在するのだが、それでも効果は限られている。最近では中国など発展途上国から出てくるごみもあり、条約によっては批准していない国もあるため、全世界単位の解決は困難を極めていると言うほか無い。
第六章「進みはじめた漂流・漂着ごみ対策」
とはいえ、ICCをはじめとした「漂流・漂着ごみ」を処理・防止するための市民団体ができたことにより、「草の根」の形で市民・研究者・行政とで連携をとりながら進めている。
「海ごみ」に限らず、環境問題は国際的な連携からか政治的なやりとりの一つとして使われる事がある。環境問題もさることながら「海ごみ」もまた解決までの道のりは困難であり、かつ長期にわたる。そのためには数年~数十年にわたるスパンで、かつ一つ一つ解決に向けて邁進していく他ない。
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