学校の勉強の中で「文系」「理系」といった学問上の「区分け」が行われることが往々にしてある。とくに高校になってからは大学選びなどで特に重視され、なおかつ大学のみならず、その後の仕事においても「文系」「理系」の区分けがなされているほどである。学問的な区分けのように見えるのだが、実を言うとそこには差がないように見えて「差別」といったある種の「レッテル貼り」として使われることもあるのだという。
ではなぜ区分けされたのか、そしてその区分けは日本・世界においてどのような影響を与えたのか、また区分け自体に意味があるのか、それぞれについて議論をしたのが本書である。
第1章「文系と理系はいつどのように分かれたか? –欧米諸国の場合」
もともと「文系」「理系」が区分けされた経緯を見てみると、欧米諸国における「大学」そのものの歴史から紐解いていく必要がある。もっというと大学が生むきっかけとなった教養や学問の研究にまで遡るほどになる。そう考えると、学問や教養が生まれたのは古代、大学が生まれたのは12世紀頃と言われているが、その時は専門と学芸といった区分けがなされた。その後科学技術の発展が目覚ましくなり始めた時に「自然科学」の専門ができたのが17~18世紀のころであり、そこから文系・理系の区別ができた。
第2章「日本の近代化と文系・理系」
日本において学問が成立し、なおかつ形作られたのは江戸時代のころ、「鎖国」をしていた時代である。完全に海外との交易を絶ったわけではなく、中国大陸とオランダとの交易が中心であり、その両国からの学問・教養を取り入れたことにある。
第3章「産業界と文系・理系」
「文系」「理系」は学問的な区分けであるのだが、産業の世界でも区分けされる。求められる人材や職業においても切り離すことができないためであり、特に理系においてはメーカーの研究職など、理学的な知識や教養を持つ方々しかできないような仕事もある。
第4章「ジェンダーと文系・理系」
最近では「リケジョ」と呼ばれるほど理系に進み、活躍する女性も出てきているのだが、それでもなお「文系」「理系」の区別における男女比は未だに残っているほどである。その根源の一つとしてはジェンダーステレオタイプ(性差の思い込み)もあるという。
第5章「研究の「学際化」と文系・理系」
「国際化」と言う言葉はあるのだが、「学際化」は初めて聞く。そもそも「学際」とは、
「いくつかの異なる学問分野がかかわること」(「広辞苑 第七版」より)
とある。もっとも私自身も大学は文系なのだが、実際に学んだことは理系もけっこう絡んでいたこともあり、その意味では「学際化」の勉強を行ったと言えるのかもしれない。学問的な進化を通じて「文系」「理系」の区分けが曖昧になり、かつ無くなっていく傾向にあるという。
今もなお「文系」「理系」の区分けはある一方で、ハッキリとした区分けが無くなりつつあり、文系・理系といったものから新しいカテゴライズになるのか、あるいは単一になっていくのかなどの選択肢に進んでいくこととなる。学問の歴史も「文系」「理系」に限らず、多種多様な区分けがなされ、区分け自体が変わりながら進化をしていくその足跡を知ることができた一冊である。
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