自然はそんなにヤワじゃない―誤解だらけの生態系

人間の自然破壊は止まらない。さらに言うと様々な生物が「絶滅危惧種」に指定され、本当に「絶滅」した生物も存在する。このままでは自然環境における生態系も崩壊しているのではと危惧する識者も存在する。

しかし本書のタイトルにある通り、人間が思っているほど自然はヤワなものではなく、かつ生態系も容易に崩壊するものでもない。ましてや生態そのものも誤解しているのだという。
本書はその生態系の誤りについて指摘しつつ、生態系の在り方について著者の研究をもとに示している。

第一章「生物を差別する人間」
生態系の崩壊を危惧しながらも、忌避する植物や動物も少なくない。例えば雑草も邪魔者扱いすることもあれば、ゴキブリや虫の幼虫(青虫)なども忌避する人もいる。
そういった生物への「差別」「忌避」は生態系とは別問題だ、と主張するかもしれないが、そういった感情も生態系を崩す要因になる。例えば虫の幼虫を餌とする生物は食べるものが無くなり、餓死する。そしてそれが続くことによってその虫を餌とする生物が絶滅し、ドミノ倒しのようにその上の生物も絶滅する引き金になる。

第二章「生物多様性への誤解」
虫などを忌避する要因の一つとして「殺虫剤」などが挙げられるかもしれない。しかし「殺虫剤」は、かえって生物多様性を促進するという。
殺虫剤に効果がある虫は大概「大型種」と呼ばれる虫であり、食物連鎖のピラミッドでは上位にいる所にある。その上位にいる殺虫剤で駆逐されると、餌にされる下位の動物や植物は生き残る可能性が高まり、徐々に増えていく。そのことによってピラミッドのバランスは高めることができるという。ただし、度が過ぎてはかえってバランスを崩しかねないことは付け加えておく必要がある。

第三章「人間によってつくられる生態系」
生存するための掟として「変化するものが生き残る」がある。これは温暖化となった現在でも同じことである。
その温暖化の中で増える生物もいる。本章ではブラックバスを中心に生態系がどのように変化をして行ったのか考察を行っている。

第四章「生態系は誰のためにあるのか」
では「生態系」は誰のためにあるのか。地球のためだとか、生物たちのためだとか言うのだが、結局の所、自分自身とその周りの住まいのことを表しているに過ぎないという。
本書は地球温暖化を容認しているわけではない。温暖化による生態系の崩壊に関する議論に対して一石を投じているに過ぎない。

しかし生物は、変化する環境の中で生き残るために「進化」を続けている。それは私たちの見えないところで行われているのだが、その「進化」を否定しているのは、もとの環境に戻そうとしている「私たち」なのかもしれない。それに気付くことができるのか、私たちは試されているのかもしれない。

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