ラブ・オールウェイズ

元々恋愛作品を取り上げている著者の中でも、著者本人が「特別な本」と銘打っているのが本書である。本書が出版される2年ほど前、ちょうど本書の短編集が連載している2012年に本書に掲載されている挿絵の引用元である絵本作家・伊藤正道氏が55歳の若さでこの世を去った。その引用元となった作品も伊藤正道氏の遺作と言える「僕への小さな旅」などから絵・文章が取り上げられ、なおかつ本書の最終話には伊藤氏に捧げるために遺作を度々登場させている。

著者と伊藤氏の関係は本書に登場してくる美亜子と佑司の恋物語なのだろうかと言うと、正直言って分からないのだが、もしそういった関係に限りなく近く、それでいて著者自身も伊藤氏、及び伊藤氏の挿絵と物語を愛していたのかもしれない。そういった思いを、著者の物語にしたため、著者の言う鎮魂歌(レクイエム)をしたためた一冊だという。そう考えると本書は1990年代から20年という長きにわたり文通を続けていた恋物語を綴っているが、一途な恋物語でありながら20年の間にある「色々」が魅力的と言える。