ホームレス農園―命をつなぐ「農」を作る! 若き女性起業家の挑戦

「格差」や「貧困」など労働や生活における悪い話題が絶えない。しかしその話題に風穴を開けるがごとく「ホームレスをファーマーに!」のもとで貧困問題を農業でもって解決していこうとする方が存在している。本書はそれを行っている団体がどのような形で設立し、活動していったのか、そのことについて取り上げている。

第1章「藤沢市にはホームレスが輝く農園がある」
どのような団体なのかというと「農スクール」という所にあり、本部は神奈川県藤沢市の田園地帯にある。著者も団体の長の仕事をしながら毎日農作業に勤しんでいる。またそこにはホームレスの方はもちろんのこと、ニートなど現代社会にて働くことが難しい、あるいはできない方々に対して農業を通じて職業支援を行っている。またなぜそういう方々に対して就農を支援しているのか、その理由についても統計とともに取り上げている。

第2章「私が「農」を始めたワケ」
元々著者も農村の出身だったのだが、著者は農家ではなかった。両親共々教師だったという。そのこともあって農家への思いが募ってきたが、他にもある映像がきっかけで思いが強くなった。しかし本当に農業に携わるまで紆余曲折があった。

第3章「農業界とホームレスをつなげる」
また、ホームレスに対する接し方にもショックを受けたことにより、「農業」と「ホームレス」をどのように結びつけるのかを考え続けた。そうして小さな市民農園を借りて塾をスタートした。その中でホームレスを雇うことにしたのだが、周囲の反対意見も相次いだ。しかしその反対意見を押しのけつつ、ホームレスを支援するボランティア団体と掛け合ってホームレスを雇うことができた。またその中で、あまりにも厳し過ぎるホームレスの現状を知ることとなった。

第4章「生活保護のほうが“マシ”?農業研修に新たな壁」
しかも厳しい現実を突きつけられたのはホームレスだけではない。現場でも生活保護受給者を雇うことになったのだが、本章のタイトルにある「壁」に遭遇することとなったという。またニートの現状にしても「働きたくない」というよりも「働き方が分からない」というほど、内面的な事情があったという。

第5章「就農第1号誕生!そして見えてきた次の課題」
元ホームレスが農業研修を通じて、ついに農家への道を歩むこととなった。その中でもう一つの課題があった。そもそも今ある日本の「農家」としての現状がある。もっと言うと新しく農家になる人と従来の農家との大きな「溝」が浮き彫りとなったことにある。本章の所を見るに当たり、農業衰退の本質が映し出しているような気がしてならなかった。

第6章「「ホームレス農園」は今、さらなるステージへ」
ホームレス(・ニート・生活保護受給者)から農業研修へ、そして農家へのプロセスは現在著者が運営している「農スクール」で行われている。もちろん農家を育成するだけではなく、新たな農家を育てるための講師として活動する、農スクールの中で収穫した農作物を販売するなどの仕組みを本章にて紹介している。

農業にしても労働にしても、日本には様々な問題を抱えている。それを打開すべく著者は「農スクール」を設立し、農業・労働双方の観点から支援を行い、新しい農家を育成している。日本が抱えている問題をこれで解決するかどうかと聞かれると一筋縄ではないか無いのだが、解決する一つの「解」が本書にて出ていると言える。