働き盛りがなぜ死を選ぶのか―<デフレ自殺>への処方箋

世代別の死亡要因として挙げられる資料に、毎年20~40代の人の死因の第1位は自殺となっている。もっと言うと、自殺は高齢者にも波及しており、毎年3万人もの自殺者が出ている要因になっている。
本書は高齢者の自殺ではなく、最初に取り上げた働き盛りの世代がなぜ自殺を選ぶのか、その要因を迫っている。

第一章「国全体がうつ病にかかった?」
自殺に走る要因の一つとして「うつ病」が挙げられる。その「うつ病」が自殺につながる要因とは何か、その側面には「ネガティブ」と「社会の現状」があるという。

第二章「働き盛りを死に追い詰める日本社会」
その働き盛りの人々がなぜ死に追い詰めていくのか、そしてそのような社会となったのはどうしてか。その原因にはストレスを引き起こすようなものもあれば、人間関係やモノの依存に関するものもあるという。

第三章「なぜ自殺率は跳ね上がったのか」
かつて自殺者数は3万人を切っていた。しかしあるときから3万人以上を推移しているのだが、そのキーポイントとなったのが1998年である。統計によると1998年には自殺者数が前年に比べて35%増加し、3万人の大台を超えたという事態が起こった。その前年には北海道拓殖銀行や山一證券などの倒産による金融危機があったのだが、そこに関連性があるのか、そのことも取り上げられているが、ほかにもオイルショックや当時の政府の迷走にも言及している。

第四章「なぜ十年もデフレが続いたのか」
第三章にて自殺率が跳ね上がった要因に1998年があるのだが、その時代は「失われた10年」ないし「失われた20年」と呼ばれる経済低迷期の状況にあった。その状況の中がなぜ長く続いたのか、そのことについて取り上げている。

第五章「デフレは社会をうつにする」
そのデフレと呼ばれた時期に「うつ」が増えていったのだが、その原因には正社員の減少や不安定な稼業と言われる「非正規雇用」の増加といった雇用体系の変化があったという。

第六章「デフレを脱却する」
そのデフレを脱却するためにはどうしたら良いのか、を取り上げた経済本は数多くあり、その分だけの意見が存在するのだが、本章ではその意見をいう前にデフレを脱却する必要がある理由を述べている。

第七章「完全雇用社会」
ではデフレを脱却するためにはどうしたら良いか、著者は「完全雇用社会にすること」を提唱している。その完全雇用社会をどのように促していけば良いか、本章ではスイスを事例に取り上げつつ、実現する具体的な方法を紐解いている。

第八章「高度高齢化社会を乗り切るために」
高齢化社会と呼ばれているのだが、その言葉の頭に「高度」とついている。その「高度」は何を表しているのかと言うと「経済」や「技術」と言ったものがあるという。そういった「高度高齢化社会」を達成するためにはどうしたら良いかを取り上げている。

自殺者を減らすにはどうしたら良いか、そこには経済や社会のシステムを変える必要がある。しかしそういったシステムには複雑さがあるのだが、その複雑なシステムを変えるためにはどうしたら良いか、本書はその一つの提案をした一冊である。