昆虫学者、奇跡の図鑑を作る

昆虫に関する図鑑や文献は数多くあり、その大元の一つとして博物学者であるジャン・アンリ・ファーブル「昆虫記」、日本では「ファーブル昆虫記」が有名である。

それから様々な「図鑑」が世に出ているのだが、まんべんなく取り上げられているが有名な物ばかりのものもあれば、特定の種類のみ偏るといったものもある。本書は著者自身が監修した昆虫図鑑の製作秘話を引き合いに出しつつ、奇跡の図鑑を作りたいと考え、行動した記録である。

第1章「一切妥協なしの図鑑を作ろう」

きっかけはある「クレーム」だった。ある図鑑の内容についてメールで苦言を呈された事であるが、そもそも著者自身の担当した図鑑ではない件だった。そう考えるとナンセンスなクレームのように見えるが、それがきっかけとなり、監修を行っていた図鑑の会社の「顔」である昆虫図鑑を「妥協」を排除して作ろうという思いになった。

第2章「春の虫の採集・撮影」

「妥協なし」で臨むとなると、取り上げる昆虫の選定はもちろんのこと「採集」や「撮影」の量が膨大になる。本章から第5章に至るまでは春夏秋冬、東西南北問わずに昆虫採集・撮影を繰り返している。

本章では春の虫としてハエやガ、さらには珍しい春に出てくるトンボなどを取り上げている。

第3章「夏の虫の採集・撮影」

夏になると今ではあるのかどうかは不明だが、子どもたちが昆虫採集を行う夏休みとなる。虫が大の苦手な私自身、良い季節のようでいて虫に出会うと逃げてしまうことが多い。それはさておき、夏に採集できる虫は数多くあるのだが、本章ではカゲロウやバッタ、さらにはあるのかどうかはテラフォーマー(アルファベットなどになると忌避感の強い人もいるためこのようにしている)などを取り上げている。

第4章「北へ南へ虫探しの旅」

虫は種類によって、適している場所が異なっている。そのため著者は日本津々浦々を縦横無尽に虫を追って旅をすることとなった。場所によっては奄美大島のように昆虫採集自体規制されている地域もある。

第5章「秋冬の虫の採集・撮影」

秋冬の季節になると昆虫も少なくなると思われるが、実際には秋・冬それぞれの季節に生息する昆虫も少なくない。本章では秋や冬に出会った虫の採集を取り上げている。

第6章「もう二つの図鑑」

本書にて行っている図鑑の他にも「図鑑御三家」と呼ばれる図鑑がある。本章ではその図鑑の存在と、著者が監修している図鑑との立ち位置について取り上げている。

第7章「修羅場の編集・校正作業」

図鑑は辞書と同じように採集や撮影した物を編集・校正を行っていく量が膨大である。わかりやすく、偏りもなく、理想とする図鑑をつくるためには採集や撮影よりも、編集・校正がどうしてもウェイトを占めることが多い。しかも締め切り近くになると「修羅場」にもなりやすい。本章ではその修羅場を明かしている。

「図鑑」が作られるまでの秘話が盛りだくさんだったが、特に昆虫図鑑になると、サンプルとなる採集や撮影が長期にわたって行われ、そこから厳選して世に送り出されることがよくわかる。私たちのなかでよく閲覧される図鑑の裏側がよくわかる一冊である。

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