ドキュメント 精神鑑定

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ドキュメント 精神鑑定 (新書y) ドキュメント 精神鑑定 (新書y)
林 幸司

洋泉社  2006-03
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「精神鑑定の何であるかを、私たちにはまだ何も知らない!」
本書の表紙を一つめくった時に出た最初の文である。この時点で衝撃的な本であるなと感じた。精神鑑定とは一体何なのかと言うのはまだまだ私たちにもわからないところがある。本書はケースも交えながら解説している。そもそも精神鑑定は法律に書かれているのかと言うと実はそれ自体は明記されていない。本書の冒頭で書かれているが刑法39条において心神喪失の者は刑は課さず、心神耗弱の者には減刑するという条文である。それを調べる一つの道具としての精神鑑定はある。しかし光市母子殺害事件の差し戻し控訴審において精神鑑定を行った野田正彰氏の精神鑑定について、評論家の宮崎哲弥氏との論争になったというのはあまり知られてはいないものの、ひそかに有名な論争になった。精神鑑定と言うのは身近ではないにしても、来年の裁判員制度ではこの精神鑑定が証拠として挙がってくる可能性はあるということを考えると決して他人事ではなくなる(しかし対象事件を見るとその可能性は結構低い)。
さて第1章ではそんな精神鑑定とは何なのかと言うのを多くの章に分けて結構細かく説明されている。また刑法39条をはじめとした法律に関することも書かれているので知っておいて損は全くないといってもいい。第2章では精神鑑定に関することの中身に入っていく。特に最後の部分は要注目と言ったほうがいい。最近では論文調の精神鑑定書であったり、精神鑑定の結果から「これは無罪だ」と決めつけるような鑑定書まで出てきていることも明らかになった。ちなみに精神鑑定から無罪・有罪を判断するのは裁判官であり、前述のとおり証拠の1つであるので裁判上重要視はある程度されるものの、決定的な証拠となりうる可能性は低いと言っていい。
さて第3章では具体的なケースに入っていく。様々なケースが盛り込まれており、判例にも書かれていない事柄などがあったので、刑法を勉強されている人(特に総論で、しかも39条を研究なさっている方)にはお勧めである。100選(刑法判例100選Ⅰ(有斐閣))では載っていなかったところだらけなので。最終章では精神鑑定の現状について書かれているだけではなく、心に病んでしまうことの多い現状についても書かれている。日本は高度経済成長によりものは豊かな時代となり、今では飽和時代の真っ只中である。その犠牲として渇望されているのは心の豊かさである。それと家族の複雑化と共働きによるコミュニケーションの低下、そして学校や職場の人間関係による人間不信によるものもある。それによっての精神的な病の増加によって犯罪に走ってしまうというケースもある。例えば秋葉原連続通り魔事件がその1例であることも忘れてはならない。

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