情報社会論―超効率主義社会の構図

「情報社会論」というだけに、ホットな話題についての考察がよかったように思える。それだけではなく情報社会に関することは非常に多岐にわたるが余すところなく考察されているところ、それでいて時点のように分厚くなくそれでいて的を射ている内容だったという所には称賛に値する1冊である。

第1章は「情報社会の進展に伴う社会構造の変化」であるがニート・フリーターに関する問題についての終焉について取り上げられていたがまず平成不況末期による就職超氷河期によって若年者無業者率について、軒並み増えている。しかし15〜24歳の範囲では横ばいに増加・減少をしているがとりわけ「団塊ジュニア」と呼ばれる25〜34歳では2000年以降増加の一途をたどっている。

このような問題は本書ではここしか取り上げられていなかった。とりわけ問われたのは経済格差と情報格差についての考察なのであるが経済格差と情報格差についての相関図があるが本書では正の相関に近いように思えた。つまり情報格差と経済格差というのは無関係というわけではないようである。

第2章は「情報社会の進展に伴う社会構造の危機」とあるがここではサイバー犯罪に関することが大半を占めていた。現にサイバー犯罪というのは大きく分けて「不正アクセス禁止法違反」「コンピュータ・電磁的記録対象犯罪」「ネットワーク利用犯罪」など大きく分けて3つ分けると、「不正アクセス禁止法違反」と「ネットワーク利用犯罪」の検挙数が顕著に増えていた。

しかしコンピュータでの犯罪はこれだけではあるが、ほかにもインターネット等を利用しての犯罪(覚せい剤や売春等)も増加していることにも目を向けなければならない。さらにはWinnyを利用しての情報流出も深刻な社会問題と化している。現在これの対策のための法律も整備されているが不正アクセスなどどこが発生源なのか分からないところまで及んでいるため検挙率が低いのではないのかと推測する。

もしこれが事実であったとしても対策は非常に困難であり例えばネットカフェで不正アクセスの犯罪をやったとすると犯人は容易に逃げ出すことも可能である。もっと言うと不正アクセスを未然に防止をすることを行ったとしても結局その針に糸を通すような感じでまた発生するというイタチごっことなる。とはいえこれに関してネットカフェをはじめとしたインターネットが自由に使える施設向けの対策を施したほうがいいというのが無難だろう。

第3章はWebコンテンツであるが、Web2.0がすでに定着している中今度はWeb3.0が入るのではという情報も入ってきた。これについてはいくつか出ているのでそれを読んだ時に感想を言うことにするが、Webコンテンツの進化というのはドッグイヤーの如く非常に速いスピードで進化している。

特に今のWebコンテンツの進化はユーザーの視点が非常に強く反映されている。そのためか著作権問題にまつわる軋轢が絶えないというのが事実である。しかしそれについて追いつけるような法律をつくったほうがいいと言っていたが、これに関する議論をしている間に新しいコンテンツが生まれている。

なのでいくら法律が追いついたとしてもすぐに新しいコンテンツが生まれるため法改正の観点からしても難しいことがよくわかる。法改正自体は難しいものの法解釈による柔軟な対応がユーザー側及び権利者側双方の歩み寄りが求められるのではないだろうか。

最後の第4章はコンテンツビジネスであるが現在日本においてリードしている産業の1つとしてコンテンツビジネスがあげられる。技術的にも先進的ではあるものの著作権の関係で世界的にはプラス的に認知されているものの日本の、特に権利者側にはあまりいい印象を持っていないということも事実である。

とりわけ動画共有サイトに関して言うとJASRACは著作権料支払いで妥結はしたものの、TV局側は動画削除で妥結したものの、まだその火種はくすぶったままである。既得権益の関係もあるかもしれないが互いの理解が得られない限りそういったビジネスに踏み込めないという弊害も生まれているのも事実として取り上げなければならない。

また著作権など知的財産権についても本書で取り上げられているが、まだまだあいまいなところも多く、今後は有識者会議において権利者側・メーカー側・ユーザー側双方に立った法律作り、または解釈などによるガイドライン作りが求められることだろう。

Webなどの情報は絶えず進化する。しかしそれに似合ったガイドライン作りというものを急ピッチで進めなくてはいけないということも事実である。