台湾物語―「麗しの島」の過去・現在・未来

日本にほど近く、さらには親近感としても「近しい」国として知られる台湾。近頃は新型コロナウイルスの影響もあり、なかなか難しいのだが、旅行先として人気がある。実際に旅行のガイドブックでも台湾を中心としたものがいくつもあるほどである。

しかしそのガイドブックには載っていないような歴史や地名なども数多くある。本書は知られざる台湾にまつわる「物語」を7つ紐解いている。

第一章「北と南の物語」
「台湾」と言っても2つの要素があると言える。一つは「人」、よく台湾では台湾の中で生き続けている人を「本省人」、中国大陸から戦後渡ってきた人のことを「外省人」と呼ぶ。さらに場所としての意味合いで「北」と「南」とである。もちろん国が分かれているのではなく、「地域」という意味である。北というと首都の台北が有名であるのだが、南にある「台南」はアメリカで言う所の「ボストン」に喩えられ、盛んであるという。

第二章「母語と国語の物語」
台湾は「多言語国家」とも言える。公用語は中国語であるのだが、台湾独自の言語である「閩南語(びんなんご)」もあり、さらには大東亜戦争は日本が統治していた名残から日本語も一種の公用語として成り立っている。特に大東亜戦争前に生きた台湾人はかなり日本語がペラペラであるのだという。他にも馬英九政権の中で起きた学生運動についても取り上げている。

第三章「鬼と神様の物語」
台湾にまつわる宗教や伝承について取り上げている。その中でも特に「鬼」と呼ばれるところなどは台湾独特の伝承であり、なぜ「鬼」が言い伝えられているのかにも言及している。

第四章「赤レンガと廃墟の物語」
「赤レンガ」と言うと日本では東京駅や横浜のイメージが持たれるのだが、台湾では総統府が東京駅を思わせるような赤レンガの造りになっている。それもそのはずで東京駅をデザインしたのは辰野金吾であるが、台湾の総統府は辰野の弟子が手がけている。総統府は日本統治時代にできた文化財として指定されているのだが、他にも日本統治時代の建築物などもいくつか取り上げられており、台湾の歴史に欠かせない「文化遺産」という意味合いもある。

第五章「地名と人名の物語」
台湾には歴史的なルーツから名付けられた地名や人名が数多く残っている。地名や人名と言ったスポットについてどのようなエピソードがあったのかも盛り込まれている。

第六章「台湾と中国の物語」
台湾の歴史は複雑である。元々台湾が日本統治を行う前は中国大陸においても「四害の地」と呼ばれており、場所こそは認知されていたものの、全く手をつけていんかあった。また台湾先住民族もおり、その歴史は中国大陸や欧州列強、さらには日本と様々な国の要因が入り交じっていた。また日清戦争後には「台湾民主国」が存在していた所についても言及している。

第七章「映画と旅の物語」
最後は映画や台湾の「旅」にまつわるものである。台湾では2007年に「練習曲」という映画が公開され、大ヒットした。これは自転車で台湾を一周する旅の物語であり、この映画により、自転車・オートバイなどで台湾を一周する人が流行したとも言われている。実際に一周するとどのようなスポットがあるのかを記しているのが本章である。

距離としても、親近感としても非常に近い国台湾。最近でも親近感がわくようなエピソードもいくつかあり、新型コロナウイルスの影響もあり現象はしているものの、それ以前までは台湾も旅行先として多くの日本人に親しまれていたという。コロナが去って海外の往来が再び盛んになり出したとき、台湾と日本の距離もますます縮まっていくに違いない。