フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

元々はお金を払わなければ手にはいることのできない情報が、Googleなどの検索エンジン、フリーペーパー、無料動画など「Free(無料)」にまつわるビジネスが急成長を遂げている。従来はモノの売り買いによってお金が動くのだが、無料のモノを提供することによって「新たな利益」などをもたらしてくれるという。本書は巷にある「Free」がどのような戦略でもって広がっていったのかを紐解くとともにこれからのマーケティング、経営学など商業に関わる概念の変容がどれほどなのかを本書が解き明かしている。

第1章「フリーの誕生」
「フリー」の誕生は1900年代、レシピやカミソリなどのから始まった。当時は販売促進のための無料配布の印象が強く、販売するというよりも「繋げる」役割だったように思える。

第2章「「フリー」入門」
さて「フリー」とは何か。本章では英単語の「Free」の五限から辿っている。

第3章「フリーの歴史」
フリーの誕生についての歴史は第1章の通りであるが、ここでは20世紀の資本主義を鑑みながら、フリーがなぜ注目されてきたのかについて考察を行っている。

第4章「フリーの心理学」
ある店で、その商品が無料で販売されていた場合、あなたはどのような印象を持つのだろうか。おそらく悪い気はしないだろう。「お金をかける」という犠牲を払うこともなく、モノや情報を手に入れることができる。

第5章「安すぎて気にならない」
しかし無料というと、その商品や情報に関して信憑性や評価が低い様に感じずにはいられない。
安くなっていくからには、それなりの理由があり、その価値が見いだせなくなったこと、そしてお金を払う犠牲をしてでも買いたいという価値が無くなったことが挙げられる。

第6章「情報はフリーになりたがる」
90年代にインターネットが出てきてから、フリーは急速に注目されるようになった。新聞や雑誌、本でしか手に入れることができなかった情報をサイトでつなげば一発で手に入れられるようになったのである。ただし、会員制や有料性のものもあるため「全て」ではないが。

第7章「フリーと競争する」
ここでは事例を2つ紹介している。OSを巡ってマイクロソフトとリナックスが、サーチエンジンを巡ってYahooとGoogleが、である。
マイクロソフトをのぞいて今やフリーという言葉を感じずに入られない会社である。それが故に、マイクロソフトは数年かかり、サーチエンジンは数ヶ月で済んだと言えるのかもしれない。

第8章「非収益化」
Googleの収益は専ら「広告収入」である。しかしGoogleが行っている他のビジネス、例えばYouTubeやGoogleEarthは赤字続きで採算性がないことは有名である。しかしGoogleはそれらを「慈善事業」と称して行っているため、Google本体自体、採算性のない事業を行っても、痛くも痒くもない。

第9章「新しいメディアのビジネスモデル」
コンテンツではNHKオンデマンドが月々の料金を値下げし、いくつかの有料コンテンツも無料になった。おそらく有料で行っても赤字になってしまうため、広告収入などに利益を頼らざるを得ない状況になったのかもしれない。

第10章「無料経済はどのくらいの規模なのか」
フリーは広がっていると言ったのだが、フリーである経済、「無料経済」はどのくらいの規模なのかについて本章である。本章によると約3000億ドルと言われている。

第11章「ゼロの経済学」
そもそもフリーは経済的に成り立っているのかというと、オンラインによる広告収入、もしくは通信料などが挙げられる。そこでお金が動いている為、「フリーの経済」は私たちには見えないが、動いているといっても良い。

第12章「非貨幣経済」
フリーの経済は「非貨幣」とも言われている。従来はお金のモノの取引によって成立してきたのだが、これからはお金を伴わない、「贈与経済」というのが生まれるという。

第13章「(ときには)ムダもいい」
フリーが行われることにより、潤沢な経済となる。そこから収益を見出すのはその次で、様々なものを無駄にしながら、潤沢を得るという。

第14章「フリー・ワールド」
ここ最近急成長している国は軒並み「フリー」の可能性を見出している。しかし中国では「海賊版」が紹介されているのは気になった。

第15章「潤沢さを想像する」
SFの世界を例に挙げながら、潤沢な世界はどのようなものであるかについて述べている。

第16章「お金を払わなければ価値のあるものは手に入らない」
フリーの経済であればあるほど「お金を払うほど価値のあるモノ(・コト)」が重要視される。これまではモノであるだけで価値を見いだしてきたのだが、これからは情報や付加価値といった所に価値を見出すのかもしれない。

フリーは新たなビジネス、マーケティングを見出されるのと同時にその社会のなかでどのような考え、ビジネスを見出して行けば良いのかが詰まっている。フリー時代の教科書というに相応しく、あらゆる観点から「フリー」を見ている。