あらゆる小説は模倣である。

私自身、小説作品に触れることが何度かある。その作品の中には「パクリじゃないか?」と見まがうような作品も少なくない。「パクリ」とまでは行かなくても著名な作家の影響を受けて作風にまで似ているような雰囲気を醸す作品もある。特に後者は「模倣」に近いようなものと言える。しかも後者は「作風に影響を受けた」というニュアンスであれば、多くの小説家は他の小説作品、人物に多かれ少なかれ影響を受けているため、本書にあるタイトルはまさにその通り、とも言える。

しかし、考えていくと、小説が「模倣」だとするならば「オリジナリティ」は必要なのかどうかが疑わしくなってしまう。
本書は模倣の現状と良さについて、そしてオリジナリティの疑いについて説いているが、今まであった小説の考えを覆すため、ある種の「挑戦」というべき一冊である。

第1章「模倣と「パクリ」のあいだ」
最近大学のレポートや論文などで言われているものとして「コピペ」がある。これは元々あるレポートや文献をそのまま引用して、自分自身の考え方や意見を書かない、と言うようなものであり、完全に「単位取り」と言える様なものである。
話が少しそれてしまったので本題に移る。小説には多かれ少なかれ、他人の作品の作風に似ているのは間違いない。著名な作家の影響を受けて、「オマージュ」と呼ばれるような作品もある。作品に対してのリスペクトのために「同人」などの二次的創作物まで存在する。
ここでネックになるのが「著作権」である。その著作権のなかで作品の「盗作」を巡り提訴されたり、あるいは告発本が発売されたりしている。特に著名なものでは小説界ではないのだが、ジャーナリストの佐野眞一が挙げられる。

第2章「オリジナリティの呪縛を解く」
「オリジナリティ(originality)」とは一体何なのか。調べてみると、

「独創。独創性。創意。」「広辞苑 第六版」より)

とある。しかしその「独創性」を鍛えるにはどうすれば良いのか。小説の場合だったら、小説にも触れず、ただ、自分自身の感覚だけで小説を作ると言うのには限界がある。ましてや小説そのものを知る必要があるため、小説家は多少なりとも小説を読み、そこから影響を受けたものと自分自身のアイデアを混ぜ合わせる。
それは小説に限らず、映画の世界でも言えることで、世界的にヒットしたハリウッド作品のなかにも日本映画などを着想とした作品もある。(例えば「スターウォーズ」のキャラクターは、黒澤明監督の映画「隠し砦の三悪人」を着想にしている)

第3章「模倣実践創作講座」
「模倣的創作」をするためには、他者の作品の影響を受けてしまうのだが、あまり受けすぎてしまっては、自分自身の考え方とはそれてしまう。独創的な書き方・考えをする場合は、他者の小説、と言うよりも、美術館など違う畑の所で感性を磨く、あるいは現地に行くことで、あらゆる角度から「刺激」や「着想」を得ることが大切である。そして何よりもタイトルにしてもキャッチーな言葉が出てくる、あるいは巡り会ったら様々な形で変えてみると良い。しかし商標登録されるなど、ある程度の「権利」を持っている者は、訴えられる可能性が高いためやってはいけない。

本書は「読み手」の側から小説とは何か、書き手としても「創作の書き方」といった両方の側面を持つ。その中で小説は完全に「オリジナル」である、と言う考えを捨て去り、多かれ少なかれ「模倣」している、と言うのが著者の見解である。小説には様々な人や考え方がストーリーのなかにまぶしてある。模倣もあるが、それを上手くまぶしていくのか、それを本書にて伝授している。