仕事ができる人はなぜ「あそび」を大事にするのか

本書は2月から続いた「ダダ本会議」にて、制作過程を公開しながら作られた一冊である。
今まで6回開催されていたのだが、そのうち5回参加している。その5回について感想も書いてあるのでリンクを貼っておく。

第1回 第2回 第3回 第4回 第5回

その会議の中で構成が変わったり、書き上がったゲラを読みながら意見を交わしたり、とオープンな形で行われ完成したのが本書である。
本書は仕事術という範疇であるが、「あそび」という言葉が中心に盛り込まれている。しかし、仕事をする人の中にはその「あそび」を否定的に見ている人が多いことを考えると、ある種挑戦的な一冊のように思える。

しかし、仕事を楽しむ、仕事を続けるためにはある程度の「あそび」は必要だと実感する。私の本職のシステムエンジニアでも、様々なところで「あそび」を取り入れている。
最初にも言ったように本書は「仕事術」であるが「あそび」を中心にしている。仕事といっても人間関係や人脈というように括りを広げながら「あそび」の効用について書かれている。

第1章「「あそび」があるからチャンスをモノにする!」
著者は新人の頃、仕事のできる先輩とできない先輩についての違いをみていたという。私の新人の頃というとごく最近であるが、同じように仕事のできる先輩とできない先輩の違いについてみたことがある。できる先輩はいろいろと「あそんでいた」事を今でもはっきりと覚えている。
仕事の中で「あそび」というのは必ずといってもいいほどある。それが「余裕」や「距離感」、「裏側」にいたるまで「あそび」と括ることができる。

第2章「時間の「あそび」をつくる!」
時間的な「あそび」を作るために著者は週に1度何も予定を入れない日をつくる。急な仕事や執筆の時間に充てることができるようにするためである。ここでは「バッファ」と呼ばれる事もある。
余談であるが、本書は当初「バッファ仕事術」という内容であった。編集者は乗り気であったが、肝心の著者が乗り気ではなかったのと同時に、周りからも「合わないのでは」という声が挙がった。誰かが「あそび」で良いのではないということ、そして著者も共感したことによって本書のタイトルになったのだが、編集者の執念からか「バッファ」という言葉の執念が本章に表れている。

第3章「空間の「あそび」をつくる!」
空間というと仕事の上では「机周り」や「鞄の中」を表している。実際に机周りや鞄の中に仕事などのものが散乱し、「空白」と呼ばれるような場所が無くなってしまうと、自然に「あそび」もできず、処理する量に追いつけなくなってしまう。
「空白」というとノートも同じである。著者の処女作はノート術であるが、その中でも「空白」は必ず意識している。新たな情報を取り入れる為である。
「空白」というと分かりやすいものでパソコンの「メモリ」や「CPU」と例えるといいかもしれない。CPUやメモリの空きが無くなってしまうと処理が極端に遅くなる。それと仕事などの「空白」とよく似ている。

第4章「人間関係の「あそび」をつくる!」
人間関係での「あそび」とはいったい何なのだろうか。会社でも、プライベートでの「距離感」のところで「あそび」を作るのだという。飲み会や食事、会議、ティーブレイク、誕生日、メールコミュニケーションなどがあげられている。

第5章「結果を出すためには「ストレッチ」も必要!」
いったんチャンスができたらそれをつかみとるための決定力が必要とされる。しかし著者に言わせるとそうではなく「瞬発力」であるという。「時間管理術」に通じるモノがあるのだが、「タイムアタック」の概念を利用して仕事のスピードを上げることによって「あそび」の部分を増やすことができるという。
それだけではなく、仕事のスピードが落としてしまう「ボトルネック」を発見する事ができ、さらなるスピードアップの素となる。

本書の終わりには著者が育児休暇について悩んだこと、仕事中心となってしまって家族との時間がとれなかったという反省から「あそび」や「バッファ」を意識し始めたエピソードを赤裸々に書かれている。

本書の感想としては、私の周りにも「あそび」や「バッファ」が無く「いっぱいいっぱい」の状態になっている人が少なくない。その人達がどのように「あそび」を作ったらよいのかというのがよくわかる。
そして本書が作られるまでの「ダダ本会議」に参加したがその中で本ができたというプロセスを見ることができたというのは読者には知り得なかったことがたくさんあった。この場を提供してくださった著者と実業之日本社様に感謝したい。