なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか

「ハコモノ行政」が始まったのは高度経済成長期、時期的に言うとちょうど田中角栄が首相だった時に遡る。日本の至る所に道路が敷設し、高速道路が造られ、さらに美術館や音楽ホールと言った物が乱立した。また東京を中心とした首都圏では高層ビルが建てられ「一極集中化」に拍車をかけた。しかしそれはずっと続かず、バブル崩壊頃からは「ハコモノ行政」も減少していった。ただその名残は未だに残っている現状がある。

本書はそのことについて考察をしながらも批判も行っている一冊であるが、ちょっと興味深いのが、「大規模再開発に、なぜ建築家は関われないのか」である。東京では秋葉原や虎ノ門など様々な所で「再開発」が行われている。最も規模の大きい所だと丸の内と言った所だろう。だがこの建設に携わっている多くは建築家と言うよりも外資の建設事務所が携わっているのだという。大規模開発は日本人には向かない、もしくは信用できないと言うのだろうか。

著者は建築をテーマに取材や執筆を行いながら、生活環境にまつわる街づくりや都市計画を行っている。とりわけ地方の街づくりに関しては思い入れが強かったように思える。現に街づくりのプロデュースを行った所のエピソードも交えているため、都市計画を専攻、もしくは都市計画にまつわる企業に勤められている人であればおすすめである。