ダイヤモンド社 市川様より献本御礼。
日本における働き方は変化が生じていると言っても過言ではない、というよりもむしろかつてあった働き方にITなどが加わることによって戻っている、という考え方もできる。
しかし戦後から続く働き方をする人々にとっては、目くじらを立てる存在となり、それを賛美する人は既存の働き方を敵視する。日本経済が最近上昇気流に立ち始めたのだが、働き方は既存、もしくは新しいものも含めて変化を起こしていると言っても過言ではない。時代が変わるからでこそ、ライフデザインそのものも変わってくる。
本書は「セルフ」「ワーク」「リビング」それぞれのデザインを実践し、見出した新しい「生き方」を描写し、これからの「生き方」を提示している。
第1章「「セルフデザイン」~しなやかさは「多面性」から生まれる」
「複数の自分を持つこと」
これを聞くと「多重人格」を連想してしまうのだが、そうではない。色々な「自分」を見出し、それを表現することによって様々な側面に気付き、そして愉しむことができる。
次章にも紹介されるのだが「働く」こともまた「多面性」を持つことができる。副業ブームも昨今取り上げられていたが、本業にもう一つ持つ「副業」だけではなく、様々な職業を持つ「複業」も新しい「デザイン」として取り上げている。
第2章「「ワークデザイン」~「つながり」が生む働き方」
皆様は普段「働く」場所はどこにあるのだろうか。私の本業はSEだが、システム会社のエンジニアであるため、働く場所は「固定」されている。その一方で書評家を行っているが、その活動は自宅で行ったり、喫茶店に行ったり、はたまた電車の中で行ったりと場所は問わない。いわゆる「ノマドワーク」の側面は書評家で行っている。
本章の話に戻す。最近では「ノマドワーク」がブームと言われているが、本章ではそれ以上にデスクを捨て、既存の場所も捨て、自ら場所をつくり、そこで働くというスタイルがある。それはリアルであっても、ソーシャルネットワーク上でも同じようなスタイルを持つことができる。
第3章「「リビングデザイン」~デュアルライフ時代の「多岐点住まい術」」
「デュアルライフ」と言うと、自宅・別荘などを構え、気が向いたらそこで暮らすというスタイルを思い浮かべる。
しかし本章でいう「デュアルライフ」の定義は異なっている。色々な場所に住まいはあるのだが、むしろ「住所不定」という言葉が似合うのかもしれない。著者はかつて「ノマド・トーキョー」を企画し、1年間東京を渡り歩きながら衣食住や労働を「シェア」する活動を行った経歴がある。
本章ではその経験を活かし、東京・地方のデュアルライフの体験とススメを伝授している。
第4章「大航海時代のキャリアデザイン」
固定的な「自分」「職業」「住居」はこれから無意味なものになると、著者は主張している。その大きな理由として「時代はめまぐるしく変わっている」所にある。
「時代が変わる」からでこそ、今ある考え方は通用しなくなる。
「時代が変わる」からでこそ、計画が思うように続く可能性は低い。
「時代が変わる」からでこそ、予想外な出来事も往々にして起こる。
出逢いにしても、チャンスにしても「偶然」がつきまとってくる。だからでこそ、固定的な人生ではなく、「大航海」の如く幅を広げ、そして進化を遂げていくことが新しい「デザイン」としての在り方なのだろう。
第5章「「あいだ」を行き来するこれからの人生設計」
「白黒」はっきりつけるような人生ではなく、日本語には曖昧さがある。「白黒」の間で言えば「グレー」と言うべきか。その「グレー」の部分は時としてネガティブに扱われることもある。
しかし、これからの時代は「グレー」が重要視される。それは人生設計の中で、第1章~第3章で取り上げた「デザイン」がそうさせてくれる。
これから求められるもの、やりたいことは広がりを見せる。その広がりの中で「大航海」をするが如く広く、かつスタイルやデザインももっと広く、自分のスタイルに合ったものになってゆく。最初にも書いたのだが、本書は「これからの「生き方」」を示した一冊である。
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