世界が認めたニッポンの居眠り~通勤電車のウトウトにも意味があった!

時期はそろそろ梅雨入りであるものの、「暑い」というよりもまだ「暖かい」時期である。その時期になると、ついウトウトと眠くなってしまい、居眠りをしてしまうことも出てくるだろう。しかし仕事にしても、勉強にしてもそういった居眠りは御法度であり、なおかつ電車内での居眠りは寝過ごしてしまい、遅刻になりかねないケース、もっと言うと終電になると寝過ごし一つで取り返しのつかない事態になってしまうこともある。

居眠りはそういったネガティブなイメージを持たれるが、本書の著者はそれをポジティブに受け止めている。その理由として日本人独特の睡眠習慣にあるのだという。ではそれはどういったものなのか、本書にて解き明かしている。

Chapter01「日本人の睡眠習慣」
日本人の睡眠習慣とはいったいどのようなものがあるのか。簡単な例で言うと、今でこそ西欧式の「ベッド」が使われているものの、場合によっては床に敷き布団を敷いて、なおかつ掛け布団をかけて横たわる。そういった習慣が家族の場合親子揃って寝る、いわゆる「川の字」というのも日本独特の寝方としてある。

Chapter02「日本人の睡眠―昔と今」
元々日本人の睡眠習慣はどのようなサイクルで行われたのか、1500年頃に成立した「早雲寺殿廿一箇条(そううんじでんにじゅういっかじょう)」とう文献をもとにしている。その文献によると、睡眠は季節によるがだいたい夜7時20分~9時あたりだと言われており、起床は夜明けとともに行うのだという。
しかし時代は変わって明治時代に入ると、昼寝の概念もできはじめた。その重要な要素としてあげられるのが「福翁自伝」、つまり福澤諭吉の自伝である。福沢諭吉はエリートと呼ばれているのだが、学校時代の日課として夕方に寝て、夜10時に起き書を夜明け読む、そして朝ご飯ができた時にまた起きるというサイクルで活動していたのだという。

Chapter03「ところ変われば睡眠習慣変わる」
昼寝など何度も寝るスタイルはあったものの、睡眠時間はどうなのだろうか。世界的な統計が本章に掲載されており、それを見てみると、日本では平均7時間半程度、しかし他の国々では軒並み8時間代なのだという。しかし本章のタイトルの通り、国々の文化によって睡眠時間も異なるため、比較の意味はなさないのだが、そもそもなぜ他の国々が長く睡眠時間を取っているのか、そこについて中国やインドなど様々な国々の睡眠文化を取り上げながら考察を行っている。

Chapter04「睡眠と余暇」
バブル時代、日本と諸外国で貿易に関する軋轢が起こっていた。その時に取り上げられたのが、「睡眠と余暇」とされている。「日本人は勤勉で、余暇はほとんどない」という考えがあったのだという。現在ではそういうことが薄れてきているのかというと、必ずしもそうとは言えない。ただ変わっているといえばビジネス書などで「朝起き」や「休日利用」について説いている本が出てきているため、睡眠と余暇に関する意識は変わっていることは確かである。

Chapter05「居眠りの社会的ルール」
社会的なルールとしての「居眠り」を取り上げている。具体例で言うと「電車内の女性」「国会議員」「大学教授」を始め「授業を受けている学生」などが挙げられている。共通して言えることとして、日本の風潮であるのだが、「マナー違反」などネガティブに受け取られる。

Chapter06「居眠りの社会学」
Chapter05の内容だけを見ても本書の趣旨と反してしまう。ではそういった「居眠り」の土壌としてどのような要因が挙げられるのだろうか。社会的なルールとしてNGと見なされているのかというと、時と場合があるのだという。もっと言うとどんな人でも睡魔に襲われてしまう。とはいえどのように睡魔から対処するか、そして以下にして居眠りを行うかについても取り上げている。

Chapter07「居眠りの効果―賢くなるための短眠法」
居眠りは社会的にネガティブに受け止められがちであるのだが、実際の所、脳の整理を行う事ができ、ストレスを発散することができるなどの効果をもたらすという。これについて派脳科学者の中でも実証されているケースがあり、居眠りを奨励している本もあるのだという。

居眠りしやすい季節であるが、もっとも「居眠り」を催してしまう要因として睡眠不足というのも一因としてある一方で、脳の酷使によって眠気がでてしまうこともある。他にも食事後には副交感神経が働くことにより眠くなってしまう、いつでも眠くなる要因ができてしまうことにある。ではそれを吹き飛ばしたら良いのかというと、時と場合にもよるが、居眠りをした方が良い。特に現代日本では夜遅くに寝て、朝早くに起きるような習慣もできていることから、本書の様な「居眠り」の重要性を説くのは貴重と言える。