いま、すぐはじめる地頭力

無事神奈川に戻りました。当ブログも今日からいつもの書評に戻ります。
今年1冊目はこの本です。

地頭力とは簡単にいうと

「「地頭力」とは、仕事や人生の問題をスピーディに解決し、さらには新しいものを想像することができる「考える力」です」(p.1より)

この地頭力というのは「考える」事を前提にしている。最近ではインターネットが急速に普及したことにより、「思考能力の低下」というのが叫ばれ始めたところだと思う。さらにもう一ついえばあまりにも物事がスピーディーに動くことによって考える「時間」が奪われている、もしくは考える暇がないといえるかもしれない。

ただこの地頭力というのは一見難しいように思えるが、この力は後に「フレームワーク力」というように全体的に単純に考えるということなのでそれほど難しくない。
ではこの「地頭力」を鍛えるにはどうすれば良いのかというのを見てみよう

第一章「「地頭力」を自己診断してみよう」
自分の地頭力はどれくらいあるのかを調べることができる。「思考停止度」「仮説思考力」「フレームワーク思考力」「抽象化思考力」の4種類合計40の質問をyes/no形式で行える。これについて自分の結果を出そうかなと思ったがさすがに書評なのでやめることにした。自分自身の楽しみとしてこれは解いたほうが良いと思ったからだ。

第二章「「地頭力のある人」と「ない人」の違いを考えてみよう」
地頭力がある人、もしくは職業とは一体何なのかということが気になった。この地頭がいいのは「「棋士」や「数学者」(p.29より)」だという。棋士も数学者も過去の棋譜や公式から当てはめて考えているのだから知識を醸成して考える。自分の持っている「知識」を疑ったり、そこから新しいことを考えたりというのが非常に上手なのでこういった位置付けになっていると私は考える。「思考停止度」の結果がここにかかれているが、自分の気持ち、もしくは意見を言うことができない。

第三章「「考えはじめる」ために、三つの「意識」を持とう」
ここでは「考えはじめる」ための意識作りとして幾つかの意識をもつことを提言している。その3つとは

① 時間感覚
② 知的依存がないこと
③ 「思い込み」の認識

の意識をつけることである。時間感覚はビジネス本ではよく言われていることなので省くが、それ以外に地頭力を身につける方法として恵まれていない環境、もしくは新しい分野に取り組むということがその一つであるとしている。前例がない、まったく新しい方法を考えるというのは非常に危険だという人も多いが、新たなアイデアを捻出したり、新しいビジネススタイルを見出す方法があるという考えがあると考えると、「恵まれている環境」にある人にとっては思考的に恵まれておらず、「恵まれていない環境」にある人にとっては、よりよい環境を作っていくために思考できるための「環境」がそろっている、というわけであろう。

第四章「眠っている地頭力を呼び覚まそう」
この章では「仮説思考力」について取り上げている。「仮説」と聞くと大学で聞いたような論文やレポートで取り上げるものかと思うのだが、それをビジネスの舞台に結び付けているといっても良いかもしれない。「仮説思考力」とは結論から過程を考える力のことをいうが、ここで一つ注意しなければならないのが「完璧主義にならずに漠然であること」である。

第五章「フェルミ検定を説いてみよう」
フェルミ推定とは一体何なのか。
フェルミ推定物理学者のエンリコ・フェルミによっての質問によって名づけられたものである。よく就職試験や会社の昇進試験で

「東京駅の1日に利用する人は何人」
「世界中にレストランは何件ある」

などといった問題を目にした事はあるだろう。それがこのフェルミ推定を利用した地頭力を図る問題である。漠然とした命題の中から、限られた時間・情報をもって仮説を立て、方法・概算といったことをつかむというのがこのフェルミ推定である。日常生活の中でも漠然としたものはあるので、好奇心があれば結構地頭力というのが身につきやすいのかもしれない。

第六章「よく聞かれる疑問にお答えします」
これまでは「地頭力」の定義と良さについて説明したのだが、ここではデメリットや疑問点についてQ&A形式で書かれている。

最後にちょっとひょんな意見になってしまうのだが、第4章で「もしも人間くさいカーナビがあったなら」の話があるが、まるで落語に出てきそうな話である。もしも古典にそういった噺があるのではと思ってしまう。また著者は落語好きなのではとも考えてしまう。ともあれ、昨今の世の中はほぼ「思考停止」状態に陥っているといってもいい。その中でビジネスに限らずさまざまな場でこの「地頭力」をつける機会を身に付けていくこともまた重要であろう。