人口減少時代の鉄道論

人口が右肩下がりになっている中、雇用に関しては人手不足が深刻化している。「人口減少」は経済にて悪影響を及ぼしているのだが、本書にて取り上げられている、鉄道の「定期利用」も減少しているのだという。その中で各鉄同会社は生き残りを賭けて様々な戦略を立て実行している一方で、淘汰されている会社もある。

本書はその中で鉄道はどのような道を辿るのかその道筋を追っている。

第1章「鉄道会社の生き残り戦略――脱〝スピード〟時代のビジネスモデル」
「脱〝スピード〟時代」が本章の中で最も肝心な所と言える。最近はリニアモーターカーの開発も行われている一方で「快適に座れる」ことを前提にホームライナーや特急列車といったものを売り出す一方で、駅チカなど駅に直結した施設や周辺施設などの集客も行っている。

第2章「明暗分かれる都市鉄道の未来――ひとり勝ちする東京と〝ジリ貧〟の地方都市」
鉄道の存在感は首都圏などの都市部が強いイメージがある一方で名古屋は鉄道の存在感が薄く、「強い」と書いたのだが首都圏の鉄道も路線ごとの格差も激しくなってきているのだという。さらに首都圏では2020年の東京オリンピック開催に向けた新線建設も進んできているという。

第3章「地方鉄道が生き残るための条件――コンパクトシティ構想と駅の再生」
首都圏でも鉄道は苦しい状況にあるのだが、地方はそれ以上に苦しく、廃線になった所もあれば、鉄道そのものから撤退する所もある。また、廃線など免れても「赤字路線」と言われている状況に陥っている鉄道も少なくない。

第4章「新幹線は地方を救えるのか――大都市と地方を結ぶ高速鉄道の功罪」
2015年に北陸新幹線が開通したのはホットな話だが、来年には青森~新函館北斗間の「北海道新幹線」も開通される。他にも延伸などの計画も進められており、実際に工事も進められているのだが、果たして新幹線は必要なのかというと著者は疑問だという。

第5章「都市別に見る鉄道の未来」
これから鉄道はどのような状況になるのか、都市部について人口変動と共に取り上げられているが、それぞれ明るい未来と暗い未来がはらんでいるのだという。

鉄道は人口減少とともに、右肩下がりとなっているのだが、それでも重要なインフラとしての役割を持っているため、なくなることはないと著者は指摘している。なくなることのない理由一つとして日本人の鉄道に対する愛着もあり、なおかつこれから快適な乗り物になるということが挙げられるという。「右肩下がり」は業界が斜陽産業になるのではなく、考えようによって未来は明るいものになる。鉄道業界はその可能性を秘めていることを本書にて見出している。