昆虫の交尾は、味わい深い…。

本書のタイトルのニュアンスからすると昆虫版のエロ本にも見えてきてしまうのは私だけだろうか。もっともニュアンスについては、

「「昆虫博士」が昆虫交尾博士」になったとたんに、人々のリアクションが変わる。
 「え、この人って・・・・・・ヤバい人?」」(p.ivより)

と著者自身も自覚がある。

それはさておき、昆虫の交尾は、種類の分だけあり、様々である。しかしながらそこには生物学的な繁殖として重要な要素が隠れている。本書では昆虫に関する交尾の研究を続けてきた中で昆虫における交尾はどのようにして行われるのかを取り上げている。

第1章「オスとは? メスとは? 交尾とは?」
そもそも昆虫によってオスメスの区別はあるものとないものがある。そもそも区別の同一(雌雄同体)のものとしてミミズやカタツムリがあり、交尾も特徴的である。とはいえほとんどの種類にはオス・メスの区別があるのだが、どのようにして決められるのか、さらに交尾をするための器官、通称「交尾器」の多様性を説いている。

第2章「交尾をめぐる飽くなき攻防」
動物における交尾はまさに同じ生物同士の「生存競争」である。「競争」というだけあり、子孫を残すための攻防は激しいものである。その攻防を経て交尾を行うのだが、本章ではジャコウアゲハやカマキリ、ミツバチの交尾について取り上げている。

第3章「パズルは解けるか? 長ーーーい、交尾器の秘密」
昆虫の交尾器は特徴的であるのだが、その中でも際立っている種類もあるのだという。本章ではハサミムシなどの虫の交尾器の構成についてオス・メスの差も交えながら紹介している。

第4章「北へ南へ、新たな謎との出会い」
人間の生活にも「引っ越し」があるように、昆虫にもまた「引っ越し」が存在するのだという。その引っ越しは交尾における「引っ越し」であり、どのようにして引っ越しを行うのかも事細かく取り上げている。

第5章「主役はメス!―交尾器研究の最前線へ」
交尾や交尾器の研究の主役はメスであり、そのメスによって卵を産み、繁殖していく。その繁殖していく中でメスはどのようにしてオスを選んでいくのかも取り上げている。

昆虫の交尾は奥が深い。もっとも昆虫の生態の根源を知ることができ、なおかつ繁殖していくための、終わりなき「謎」を追っていくだけある。そのために昆虫研究の中でも根源の一つを垣間見ることができた一冊であった。