ぼくは眠れない

本書は長らく不眠症を患った方の体験談であるのだが、著者自身は作家・エッセイストなどマルチに活躍する人物である。順風満帆に見えるのだが、その裏には35年もの間「不眠症」を患っていたのだという。その不眠症の闘病日記と言うべき一冊が本書である。

1.「はじまりは唐突にやってきた」
不眠症の始まりは突然起こった。それは3月に、仕事を終えて、明日に備え、睡眠に入ろうとするもいつまで経っても睡眠にありつくことができない状況に陥った。完全に覚醒状態から睡眠に就くことができず、何をしても寝付けなかった。それがずっと続いたため、ついに病院に行くこととなった。

2.「勤めをやめるか、どうするか」
病院に行った結果、特に目立った症状がなかっく、薬を常用することとなった。もちろん眠れないときによく効く薬である。一見治ったかに見えたが再発をしてしまい、元々サラリーマンだった著者は会社を退職したという。

3.「ライオンのように眠りたかった」
サラリーマンを退職し、今の作家に転身してからというもの、日常のサイクルも変わっていった。しかしながら不眠症は治らなかった。

4.「見知らぬ女が押しかけてきた」
作家になって生活リズムも様変わりしたが、「規則正しい」と言う概念がどういうことなのか疑問に思ってしまうような生活リズムだった。そんな中ある見知らぬ女性が押しかけたことによりある「事件」に巻き込まれた。

5.「なぜ眠る必要があるのだろうか」
不眠症と「事件」という混沌から脱した時、そもそも睡眠は必要なのかという疑問に駆られてしまったという。しかし不眠症は立派な病気であったため、その病気を克服するにはどうしたら良いか、闘病記も読んだのだという。

6.「こころやすらかに寝られる場所は」
やすらかに寝られる場所を探すとなるとなかなか難しいことかもしれないし、人によっては容易に見つけることができるというものもある。その場所はどこにあるのか、試行錯誤を繰り返しながら探している。

7.「睡眠薬は脳に何をしているのか」
私は睡眠薬自体飲んだことはないのだが、著者は色々な睡眠薬を飲んできた。どのような種類の睡眠薬があり、どのような効果があるのか、自らの体験をもとに綴っている。

8.「ポル・ポトの凶悪にすぎる拷問椅子」
拷問というと、鞭などの武器で相手をいたぶり、自白を引き出したり、殺したりするような方法であるのだが、本章で取り上げる拷問は「眠らせない」と言うもの、人は何日間不眠にするとどうなるのか、という非人道的な実験を取り上げている

9.「イネムリが人生で一番おっちょこちょい」
居眠りというと悪いイメージが持たれるのだが、居眠りについてポジティブに考察を行った論文もあるように、脳の働きを回復させる効果があるとの意見もある。私自身もたまに居眠りをしてしまうことがあるのだが、その心地よさはこれ以上ないものである。

10.「睡眠グッズはどれほど効くか」
巷の店に行くと睡眠グッズなるものがある。私も寝不足が続くときに少し試したことがあるのだが、実際に効果があるのかというと疑問に残る。実際に著者自身も試してみたが、効果があるものとないものが分かれたという。

11.「やわらかい眠りをやっと見つけた」
長らく不眠症を患ってきたが、試行錯誤がようやく実り、ついに気持ちの良い眠りを手に入れることができた。この眠りによって長らく苦しんだところから解放されることとなった。

不眠症は一生続くこともあれば、著者のように長く続くこと、あるいは短く済むこともあり得る。ただ不眠症を一度患うと、どうしても寝たいのに、寝られないという苦しみを味わうことになる。それが生活リズムを崩してしまい、体の変調を来してしまう原因にもなる。不眠症は軽いようでいて実は恐ろしい側面も持っている。その病気に35年間も戦い続けたのだから、すごいものである。