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怪異

熊楠と幽霊

昭和・平成・令和と生きた「知の巨人」というと、昨年4月に逝去した立花隆がいる。ジャーナリストなどの側面を持っていることから政治的なイメージも強いのだが、実は哲学・生物学などありとあらゆる分野に精通し、なおかつ知的欲求も旺盛だった。 そしてその「知の巨人」は過去にもおり、本書で紹介する南方熊楠(みなかたくまぐす)も明治から昭和初期にかけて活躍した「知の巨人」である。南方熊楠は博物学・生物学・民俗学の […]

奇妙な瓦版の世界 江戸のスクープ大集合

元々新聞は「瓦版(かわらばん)」と呼ばれており、江戸時代において事件や災害などを伝える手段としてあった。その瓦版の記事を読み歩いた人のことを「讀賣(よみうり)」と言われ、現在ある大手新聞の一つである「読売新聞」の由来にもなっている。 しかしその瓦版の記事は新聞と言うよりもゴシップ誌の側面もある。その瓦版にてどのような記事が出てきたのか、本書はめくるめく瓦版で出てきた記事を取り上げている。 1.「怪 […]

迫りくる自分

ある種の「ドッペルゲンガー」のような本なのかなと思いきや、まさにその通りの一冊であった。自分自身の顔をした赤の他人が、偶然会い、とある事件に遭遇する。その事件に対して犯人扱いされるといった「冤罪」に遭い、逃走劇を繰り広げることになる。 「ドッペルゲンガー」といった言葉がよく似合うかもしれないのだが、奇想天外ながらも不思議な事象であるため、それに戸惑いながら、逃走を続けると言ったものである。また人間 […]

祭火小夜の後悔

怪異現象を舞台とした小説はけっこうあるのだが、その中でも本書は中でも背筋が凍るような思いをするほどにまでなった本たちの一冊に数えられるほどである。 ホラー小説と呼ばれる一冊であるのだが、そのホラーの可能性を広げたといってもイイほど過言ではない。少女が巡り会う怪異現象は全4話収録されているのだが、その4種類それぞれの現象に出くわす。しかもその現象や舞台は異なるものの、中でも特に「ホラー」という印象を […]

怪異古生物考

元々空想の動物なのかと思いきや、考古学的な観点で行くと、実は存在したのだという。もっともそのことを知ったとき、「嘘だろ」と思ってしまったのだが、実際にかつてそれらしき「骨」が見つかったのだという。そのめくるめく怪異の古動物たちはどのような存在か、そのことを取り上げている。 1章「ユニコーン」 ユニコーンはヨーロッパの神話の中でもよく取り上げられているのだが、その伝承はインドから伝来したものであり、 […]

ウェンディゴ

謎めいたタイトルのように見えるのだが、本書のタイトルはカナダにあるとある妖怪を表している。その妖怪との邂逅を描いているのだが、本書はあくまでファンタジーなので、魔術研究を行っている人を舞台としている。 また本書は中編集であるため表題作ばかりでなく、他にも2編あるのだが、いずれも幻想的な味わいを醸している。 しかもファンタジー小説でありなが、英国文学の中でも名著にあたるような一冊であるのだが、長らく […]

優しき悪霊 溝猫長屋 祠之怪

「悪霊」と言うと怖い印象がある。もっともドラマ・アニメ・小説などで悪霊というと、人に対して悪さを行ったり、敵になったりすることがあり、必ず害をなす存在としてあげられる。 しかし本書はそれとは異なり、怪談でありながらも霊たちとの関わりがあり、なおかつ江戸時代の人間模様が描かれており、事件が行うなどミステリー要素ありの一冊である。 ミステリーもあるのだが、いわゆるホラーの色が強い。しかし霊が出るなどホ […]

恋する狐

本書は狐などの物の怪が出てくるため怪異モノかと思ったら「恋する」というタイトルを冠している通り、怪異モノでありながら、恋愛・ハートフルの要素も盛り込まれた短編集である。 物の怪というと怖い印象を持ってしまうのだが、本書に出てくる物の怪はいずれもいたずら好きでありながら憎めないような印象を持ってしまう。怪談のようでいながら感動ものの小説を読んでいるような感じがしてならなかったため、ある種の違和感を持 […]

あした咲く蕾

本書は、朱川湊人氏の短編集であるが、朱川氏の小説は当ブログでも何度か紹介したこともあり、作風はよく知っている。どういった物かと言うと、女性を主体としている作品もあれば、暖かみのある作品も存在する。 本書もまた暖かみのある作品あのだが、短編集一つ一つに性格を持っており、優しいタッチのものもあれば、「カンカン軒怪異譚」といった「異色」と呼ばれるものもある。どのように異色なのか、と言うと、怪異作品そのも […]

あんじゅう―三島屋変調百物語事続

株式会社オトバンク 上田様より献本御礼。 本書は朝日新聞の朝刊で連載されていた作品を単行本化したものであり、「おそろし」の続編でもある。タイトルを漢字に直すと「暗獣」と書く。 舞台は江戸時代、「三島屋」という袋物屋である。場所で言うと神田、東京の中心部からほど近いところにある。その「三島屋」の行儀見習いの基にやってくるお客さまはちょっと奇妙で不思議な人たちばかりである。 私自身、宮部作品は「模倣犯 […]