奇妙な瓦版の世界 江戸のスクープ大集合

元々新聞は「瓦版(かわらばん)」と呼ばれており、江戸時代において事件や災害などを伝える手段としてあった。その瓦版の記事を読み歩いた人のことを「讀賣(よみうり)」と言われ、現在ある大手新聞の一つである「読売新聞」の由来にもなっている。

しかしその瓦版の記事は新聞と言うよりもゴシップ誌の側面もある。その瓦版にてどのような記事が出てきたのか、本書はめくるめく瓦版で出てきた記事を取り上げている。

1.「怪異と珍獣」
本章を見ると瓦版はかつてビートたけし・所ジョージが製作し、賑わせていた「FAMOSO(ファモーソ)」の様相を呈しているように思えてならない。何せ本章で出てくることは「人魚が出現した」「犬にされた男が現れた」「妖怪が出てきた」といったものである。もっとも瓦版はこういったナンセンスなことも扱われていた。

2.「黒船来航」
1853年、マシュー・ペリー率いる東インド艦隊2隻を含む4隻が浦賀沖に来航した事件があった。この事件について瓦版はどのようにして取り上げたのかと言うと「異国船」もあれば、「妖怪船」と扱うものもあった。さらには乗組員を1人1人取り上げている記事もあったのだという。

3.「敵討」
「敵討(かたきうち)」、もしくは「仇討(あだう)ち」は殺害したことに対して復讐を行う事件を表しており、江戸時代において最も有名なモノとして「忠臣蔵」として出てくる「赤穂浪士の討ち入り(赤穂事件)」がある。他にも敵討にまつわる事件があり、江戸時代でも瓦版として記事にされることがあり、忠臣蔵のように創作にして、後世に語り継がれているものもある。本章ではその敵討の事件を大小問わず取り上げている。

4.「戊辰戦争」
江戸から明治にかけて起こった戊辰戦争でも瓦版にて取り上げられた。戦争内で起こった戦いも詳細に取り上げられていたのだが、瓦版ならではというのがその戦の模様も画にしている所にある。画ではあるもののその顛末を知るには十分なメディアで有、歴史学的にも貴重な史料ともなり得るからである。

5.「江戸の大事件」
そもそも「瓦版」ができたのはいつ頃かはわかっていないのだが、史料として一番古いものとしては元号が「天和」と呼ばれる時代。西暦で言うと1681~1684年の頃である。そのため鎖国が完成し、江戸時代において安定的な基盤を持ち始めた時の頃である。その時から出てきた瓦版の中で江戸時代の中での印象的な事件についてを取り上げている。

6.「大火と地震」
江戸時代においての災害の代表格として地震もあれば、大規模火災として大火も挙げられる。どのような地震や大火を報じ、広がっていったのかを取り上げている。

7.「美談と奇談」
新聞でもセンセーショナルな事件を取り上げる一方で、たまにハートフルな話題やエキセントリックな話題を取り上げることもある。瓦版も例外ではないのだが、特に「奇談」と呼ばれるもののほうがよっぽど印象的だった。

8.「見立番付」
「見立」は記事のタイトルであり、「番付」はランキングである。当ブログでも印象に残った本を毎年大晦日(以前は大晦日までの数日)にランキングとして記事を記載しているのだが、瓦版ではまさに「なんでも」番付にして、取り上げている。もっとも取り上げ方は相撲の番付の如く前頭や三役などにしている所が印象的である。

9.「明治の瓦版」
明治時代にも瓦版は存在しており、西南戦争や日清戦争、さらには文明開化の風潮に至るまで瓦版にて表された。

やがて瓦版は無くなりだし、代わりに新聞が生まれるようになり今日まで続いている。もっともメディアは事実を報道するだけでなく、虚実もあたかも面白おかしく報道することもある。それは瓦版の時にはその印象が強いのだが、今のメディアも変容しているとはいえ変わらないのではないかと勘ぐってしまう。

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