祭火小夜の後悔

怪異現象を舞台とした小説はけっこうあるのだが、その中でも本書は中でも背筋が凍るような思いをするほどにまでなった本たちの一冊に数えられるほどである。

ホラー小説と呼ばれる一冊であるのだが、そのホラーの可能性を広げたといってもイイほど過言ではない。少女が巡り会う怪異現象は全4話収録されているのだが、その4種類それぞれの現象に出くわす。しかもその現象や舞台は異なるものの、中でも特に「ホラー」という印象を覚えたのが第2話である。タイトルは「にじり寄る」であるのだが、そのにじり寄る虫がムカデ。しかも本書で描かれるムカデはよくあるムカデとは異なり、形も、にじり寄り方も文章越しであるが思わず恐怖を覚えたほどである。

ホラー作品はあまり読まないのだが、本書はホラーの度合いもさることながら、少女が出くわす現象の多様さにハマってしまうほどだった。もし時期的に読むとしたら怪談が栄える夏頃に読む方がおすすめと言える。