軍服のモスキート―モノから見える世界の現実

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ここ最近日本ではデング熱の感染の広がりが話題となっている。その原因となる蚊の駆除、及び、感染拡大を防ぐために代々木公園が封鎖されたり、新宿中央公園の一部が閉鎖されるほどの騒ぎとなった。先ほども書いたのだが、デング熱の原因となるウィルスを持っている蚊が媒介となって感染するのが蚊(モスキート)である。本書はその蚊が軍服をきているように人間に対して危害を及ぼす、人間もまた蚊を忌み嫌い、除去しようとする。あたかも人間と蚊が戦争しているかのように。本書は蚊の生体とともに、人間と蚊と、蚊を媒介とする戦いについて迫っている。

第1章「蚊の命と時間」
蚊はよく、

「迷惑な隣人」(p.7より)

と呼ばれる。こう呼ばれると、どっかの外交関係を連想してしまうのだが、ここでは人間と動物の関係上そう呼ばれているととどめておく。もう夏は過ぎてはいるものの、今の時期でもけっこう飛んでおり、飛ぶ音はもちろんのこと、血を吸い、吸われた箇所が猛烈区かゆくなると言う迷惑とも言える様なものを残してしまう。またその隣人は場所によっては腫れを残すだけではなく、シャレにならないウィルスも置いていく。本書の最初で述べたデング熱はもちろんのこと、マラリア、黄熱病、脳炎などの様々な病気を持ってきては人間によこす。

第2章「歴史の中の蚊」
その中でもマラリアは歴史の中で猛威を振るったことがある。主に戦争の時代であり、いわゆる「戦争マラリア」とも呼ばれた。いつの時代なのかと言うと第二次世界大戦の時、日本では沖縄戦で沖縄各地にてマラリアを感染した例が日本軍・米軍、疎開した日本人それぞれにあり、死者も出た。他にもイタリア半島でもドイツ軍が感染する例もある。
他にも移民をした際にマラリア菌を持ってきて、移民先の民が亡くなると言った事例もある。他にも黄熱病についても同じような歴史を辿っていたのだという。

第3章「軍服のモスキート」
先程第2章で「戦争マラリア」について書いたのだが、本書のタイトルである「軍服のモスキート」は「戦争マラリア」とイコールである。戦争マラリアは第2章で述べた所の他にも第一次世界大戦ではギリシャ北部でイギリス・フランス連合軍が襲われた事件があった。その犯人は敵国であるドイツかと思ったが、何とマラリアウィルスを持った蚊だったというエピソードも存在する。また、ベトナム戦争やソマリア内戦と言った数々の戦争の中で蚊が暗躍することも遭った事から戦争と蚊の関連性はゼロとは言えない。

第4章「グローバリゼーションとモスキート」
蚊によっても種類はあるのだが、国境を越えるような、あたかも渡り鳥のような蚊が出てきたり、スズメバチの如く凶暴な蚊も出てきたり、日本で売られている殺虫剤が全く効果の無い蚊も出てきたりと、生息地域に合せて蚊は変化を遂げていると言っても過言ではない。そういう意味で蚊はグローバリゼーションに順応しているとも言える。

第5章「予防の政治」
マラリアを根絶、あるいは予防するために対策は国単位、もしくはWHO(世界保健機関)の重要課題の一つであるのだが、各国に預手T財政事情や無政府状態と言った事情があるだけに足並みが揃っていない現状である。もちろん今もなお東南アジア・中央アフリカ・中南米大陸などを中心に感染者が出ている。

第6章「モスキート・カルチャー」
「蚊」は文学作品にも出てくるという。代表的な物としてV.A.マカリスターの「モスキート戦争」や、ウィリアム・フォークナーの「蚊」、他にもダン・ジョーンズの同名の作品など、小説はもちろんのこと詩としても取り上げられている。

第7章「未来」
蚊に対して効果的な予防法はあるのかと言うと無いわけではない。もちろん蚊取り線香もあるのだが、効果の無い種類も存在する。ではどれが確実なのかと言うと、「蚊帳」というのがある。日本でも日本家屋にマッチし、かつては使われていたのだが、殺虫剤の発達などにより消滅しつつあった。しかし現在はエコロジーの思想が広がりを店行く中で再評価の動きもある。他にもマラリア・デング熱などが流行している地方では安価かつ効果的な対策といて人気があるほか、WHOでも流行国に配布すると行った事も行われている。

蚊と言うと夏に出てくるうっとうしい虫なのだが、うっとうしいばかりでは済まされない現状もある。それが最初に書いたデング熱やマラリアなどの感染症ウィルスを持ってくるという役割を持っている。そういう意味では蚊は甘く見ると蜂や熊よりも痛い目に遭うと言える生き物である。そのことを知り警告したのが本書と言える。

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