害虫の誕生―虫からみた日本史

季節は春になり、暖かくなり始めた。この季節になると虫が冬眠から目を覚まし、活動を始める時期になる。私自身虫が大の苦手であるので、それを知るだけでも憂鬱な気分となってしまう。

私に限らずとも虫の苦手な方であれば、本書に挙げられる害虫は名前を聞く、実際に見たるだけでも嫌な気分になってしまう。しかしその害虫こそ、日本の歴史を彩った存在として挙げられるという。ではどのようにして歴史を彩ってきたのか、そのことについて取り上げたのが本書である。

第一章「近世日本における「虫」」
そもそも「害虫」は人間に対して危害を与えるばかりではなく、人間の食べる作物に対して害を与えるのも存在する。その中でも特に「害虫」の印象の強いものとして後者がある。その理由として日本における農業の成立があり、その農業の歴史とともに、害虫とかかわってきた歴史が存在するのである。

第二章「明治日本と<害虫>」
その害虫に対してどのように戦っていくのか、それについて学問的に考え始めたのが明治時代である。どういった学問があるかと言うと主に「昆虫学」と呼ばれる分野が該当している。その学問からどのようにして害虫駆除の概念・技術が出てきたのか、そしてそれを巡って政府との対立についても取り上げている。

第三章「病気―植民地統治と近代都市の形成」
第一章の冒頭でも述べたように害虫は人体に対しても影響を受ける。それは虫を媒介として伝染病をもたらすと言ったものがある。一昨年、日本でも話題となった「デング熱」や、同年世界的に蔓延した「エボラ出血熱」もその一種である。さらに戦争におけるマラリアが流行し、それによる死者も多数出たという。

第四章「戦争―「敵」を科学で撃ち倒す」
戦争と害虫との関係は切っても切れない。一つには前章にて取り上げたマラリアがあるのだが、ほかにも戦争において必要となる食糧でも害虫によってダメになってしまったという。ほかにも害虫駆除のための殺虫剤があるのだが、それについて毒ガスと関連性があるという。

害虫は忌避するような存在であるのだが、そういった存在でも歴史がある。その歴史は日本人と言うか、人間として生きる中で必要な変化とともにあったと言っても過言ではない。そのことから害虫は重要な存在であるが、だからと言って私は、害虫は大事にしようとは思わない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました