デジタルサイネージ革命

「デジタルサイネージ」という言葉を初めて聞く。簡単に言うと「電子看板」を英名にしているのである。屋外でもデジタルの映像や画像が広告として使われ、様々な場所で大画面となって情報を届けるメディアである。最新技術を取り入れた広告技術であるが、あまつさえ看板広告の需要は落ち込み、減少の一途をたどっているという現実がある。

しかしデジタルサイネージには可能性があると著者は主張する。それはいったいなぜなのか、本書は事例とともに取り上げている。

第一章「デジタルサイネージとは」
デジタルサイネージが使われたのは21世紀に入ってからすでに使われていたが、本格的に認知されるようになったのは2008年のことである。業界ではこの年を「デジタルサイネージ元年」と呼ばれたという。

第二章「デジタルサイネージへの期待」
本書が出版されたのは2009年、その時はリーマンショックを境とした不況が起こり、経済的にも減衰の一途をたどった。その突破口として著者は「デジタルサイネージ」を提案したという。実際にそのことで突破口となったのかというと、疑問符はあるものの、デジタルサイネージは、経済的に意味がなかったとは言えない。

第三章「デジタルサイネージの事例」
関東で最も有名な「デジタルサイネージ」は何かというと、JRをはじめとした鉄道の交通情報である。その情報によって該当する鉄道の遅延・運転見合わせ情報と言ったことをわかりやすく伝わるようなものもある。また駅関連でいえば、自動販売機も広告や天気予報が映るようなものもある。また建物によっては大型広告としてデジタルサイネージを使うところもある。

第四章「デジタルサイネージの拡張」
デジタルサイネージは単純に映像を使って大々的に広告を行うだけではない。そこが看板広告と最も違うところであり、携帯電話と連動したり、双方向で情報を伝えたり、医療や教育など様々な現場で使われるなど、使える幅が広い。

第五章「海外のデジタルサイネージ」
ちなみにデジタルサイネージは日本独特のものだと思ったら大間違いである。海外でもデジタルサイネージは先進国を中心に使われている。特に使われているのはアメリカやイギリスと言った国々で、大都市部になると、いたるところでデジタルサイネージが多用されている。

第六章「デジタルサイネージ革命の可能性」

「2015年に1兆円の産業」(p.188より)

をデジタルサイネージの業界では予測を立てていたが、実際にはどうだったのかはわからない。しかし「革命」と言えるような爆発的な発展は確認できなかったものの、日常の中でデジタルサイネージが使われていることはいろいろとみているとよくわかる。広告にしても、交通情報などにしてもそれが使われていることがよくわかるし、革命とまではいかないけれども、少なくとも日常の中に浸透している。そのことを考えると「1兆円産業」かどうかはわからないが、少なくともそれにほど近いところまで発展していることは確かである。

今から8年前にあった「デジタルサイネージ元年」。それから8年経って、今となってはそういったものがごく当たり前に受け入れられていることは確かである。もしも著者をはじめデジタルサイネージに携わっている方々がそのことを望んでいるのであれば、この革命は「静かなる革命」といった方が良いのだろうか。