問題解決のためのファンクショナル・アプローチ入門

一昨年の夏に「ワンランク上の問題解決の技術《実践編》」が発売された。著者の横田氏の処女作である。私の中ではもっとも重要な位置にいる一冊で、この本がきっかけで考え方が変わっただけではなく、セミナーや勉強会に参加するようになったきっかけにもなった。

本書の著者である横田氏は改善士として、3月にTBS系列で放送されている、人間ドキュメンタリー番組「情熱大陸」に出演し、翌月にはファンクショナル・アプローチを民間企業に伝えることを目的とした会社を設立した。「ファンクショナル・アプローチ」によって道を切り拓いた第一人者といえる。

横田氏の続編はまだかなと考えてはや約2年だが、ついに続編が出たということでうれしく思う。続編はファンクショナル・アプローチを身近なところから読み解いていくことを中心とした入門編に当たる。

「ファンクショナル・アプローチ」とはいったい何なのかという人もいるかもしれないが、ありとあらゆる物を「機能的」に考える手法であり、キーフレーズは「何のため?」「誰のため?」である。

1.「タウン編」
職場や自分の家の外を出ると、広告の看板など様々な発見がある。同時にウォーキングをする事によって考える力が増幅することができ、新たなアイデアを出す事もできる。
また「ファンクショナル・アプローチ」をするのでも格好の場所といえる。
本書はその中から「点字ブロック」「カフェ」「ウォークマン」「通勤」を取り上げている。
「点字ブロック」は前書、横田氏のブログ、「情熱大陸」で度々取り上げられた。元々建築のコンサルタントを行っており、最大2000億円のコスト削減に成功したことからきている。ここでは視覚障害者のためになっていない残念な点字ブロックとファンクショナルな点字ブロックにについて紹介している。
「カフェ」は今年の2月に友人の竹原健一氏が主催した「ワクワークショップ」の中で取り上げられている。カフェといっても最近では「スターバックス」「ドトール」「タリーズ」「ルノアール」「ベローチェ」などフランチャイズを挙げるだけでも枚挙に暇がない。しかしフランチャイズによってスタイルも違えば、客に与える物も違ってくる(あくまで店の雰囲気や癒しといったところあって、コーヒーの味までは言及していない)。

2.「オフィス編」
会社には様々な「矛盾」があり、その中で働いている。
最初にも書いたが、著者は建設で培ってきた「ファンクショナル・アプローチ」を民間企業に対して行うということで、会社を設立した。
本章ではその中での実際にコンサルを行った時のエピソードも交えながらオフィスにおける諸々について「ファンクショナル・アプローチ」で分析している。
主に「ハンコ」や「社内規程」、「マニュアル」、「ロゴマーク」「報・連・相」を取り上げている。

3.「プライベート編」
「ファンクショナル・アプローチ」は仕事やコスト削減といったところばかりではなく、私たちの生活にも直結する考え方である。
私も「ワンランク上の問題解決術」で様々な事を「ファンクショナル・アプローチ」で実践したが、その中でもプライベートでは新しく物を買うときや、物を整理するときにまるで呪文のように問いかける。
本章では「家電」「リビング」「資格」「FacebookとTwitter」「スポーツクラブ」を取り上げているが、中でも「FacebookとTwitter」が印象的だった。ブームとなっている「Twitter」や「Facebook」の違いはいったい何か、「Twitter」と「Facebook」はそれぞれ「何のために」あるのか、それに派生して「ブログ」や「mixi」は「何のために」あるのかについて考えることができる。私はいずれも持っているが、その中でいかに自分を伝えるか見直す良い機会となった。

4.「パブリック編」
「パブリック」というと大雑把な感じがするが、ここでは公共施設や道路、標識など「公共事業」と言われるものを分析している。もっとも会社を設立する前は「公共事業」を「ファンクショナル・アプローチ」で改善を行ってきた。それだけあって着眼点も鋭く、そして「なるほど」と思わせるような物ばかりであった。

横田氏は現在、民間企業に対して「ファンクショナル・アプローチ」でコンサルタントを行いながら、さらにその思考法について研究を行っている。「ファンクショナル・アプローチ」で社会、教育を改善し、30年後の子供たちを幸せにしたいということを様々な場で暑く語っている。
その社会にすべく「幸せにするブレスト」を過去4回行ってきた。今月の20日に30名のオープン形式でブレスト会議を行うという。私も参加する。