「レバレッジ〜」の書籍で有名な本田氏であるが、それまでの道のりは極限の、本書のタイトルにある「サバイバル」の状態をくぐり抜けて、やっと得た技術であった。レバレッジという技術も必要であるが、これから本当の意味で「サバイバル」の時代になった時、どのような技術やキャリアを磨いていけばよいのか。本書はそれを教えてくれる。
第1章「個人サバイバルの時代へ」
最初のところで目から鱗になった。2008年秋頃に起こった「リーマン・ショック」の予兆は90年代にあったのだという。90年代といえばちょうど終身雇用神話が崩れた時であり、バブルが弾け、「失われた10年」が到来し始めた頃である。ちょうど90年に当時ロンドン・エコノミストの編集長であったビル・エモットが「日はまた沈む」がベストセラーになっただけではなく、その予想が当たってしまった頃である。
雇用が不安定になり始めたとき、個人としてのスキルが重要視され始めた時代と言えるようになった。もっと言うと無名の個人にもチャンスが巡ってきており、「成り上がれる」時代に入ったといっても過言ではない。しかしそのチャンスをつかむためには会社内のエスカレーターよりも獣道を進めるような試練を乗り越えなくてはならない。
第2章「決め手はサバイバビリティ」
会社を船、もしくはコテージと例えると、個人で活躍するのはテントを立てる、もしくはイカダで漕ぐような状態である。会社が担うこともすべて自分でしなくてはならない。自分自身で活躍できる力、本書ではそれを「サバイバビリティ」と定義づけている。このサバイバルにも基本方針として5つ定義されているがこれはアメリカ陸軍を参考にしているという。「アメリカを参考にしているのか」と目くじらをたてる人がいると思うが、実際に日本社会の状況も「血を見ることのないサバイバル」という状態なだけに会社ではまかなうことのできない力やスキルを持つ必要があり、かつリスクをとる必要がある。
第3章「会社で働き、キャリアを磨く」
とはいってもいきなり会社外の力を身につけるというのは本末転倒である。会社の中でも付けられる力はいろいろとある。とはいっても同じ会社に何年・何十年といても会社内の能力しか付かない。そのため、会社スキルではあるが、様々な力を身につけることができる。ある程度安定しているところでパーソナル・キャリアとしてなにを身につけるかを模索し、試行錯誤ができる時期と言える。
そして、会社選びも年収やブランドにとらわれず「お金を払ってでも働きたい」所を選ぶことを奨励している。確か先日あるニュースで「お金」を目的に働くことになるとモチベーションが落ちるという記事があった。お金をもらうために働くというのも一つの考えではあるが、スキルややりがいを持つ方が会社の中で得られる力が違ってくる。
第4章「一生通用するキャリアを磨く」
ある程度経って、いよいよパーソナル・キャリアを磨いていく話にはいるが、会社のスキルとは違い、自ら目標を持ち、意識的にしていかないと身に付かず、身につけるにしても時間は相当かかる。
概要は分かったが実際にパーソナル・スキルを確率していくためにはどうしたらよいのか、きわめて単純である。勉強、そしてそれを実践することにある。そしてそこから事業化できるかどうか会社員でありながら検証を行うこと。決して収入を一本化させずにパーソナル・キャリアで生活できるのかについても見極めてゆくことが大切であるという。
さらにキャリアの波に乗ること、最悪の時を想定することも大切である。
第5章「サバイバル・トレーニング」
ここではサバイバビリティを身につけるための簡単なトレーニング方法について記されている。とはいっても考え方や心構えといったところが主であるため、ToDoリストをつけて「この心構えはできているか」というのを毎日チェックする事によって、「サバイバビリティ」の心構えを構築することができると私は考える。
終身雇用神話が崩壊した今、「会社」の後ろ盾が保証されなくなった。その時代となって悲観視している人やメディアは少なくない。しかしそれをむしろ個人でも活躍できる「チャンス」ととらえることこそ、新たな道が開ける。本書はそのことを言っているのではないだろうか。
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