「改革」というとそれに関して「抵抗」をする人は必ずいる。「抵抗勢力」や「既得権益者」といわれている。それらの抵抗によって改革にも波風立つことが多いのだが、本書の改革は多種多様な価値観やアイデンティティを尊重しながらも、タイトルにあるように「静かに」改革を進める術について紹介している。
第Ⅰ部「静かなる改革者とは」
「リーダーとは孤独な立場である」とリーダー論について取り上げたときに何度か書いたことがある。孤独な環境の中でメンバーとの距離を置きながら組織改革を進めていくことからそう言われている。
しかし「静かなる改革者」における「リーダー」は少し違っており、様々な形で他者との変化をさせていくという。むしろ現実的でありながら、様々な価値観を理解し、距離を縮めていくということが多い。悪く言うと「八方美人」という言葉がしっくりくるかもしれないが、その八方美人がうまくいく秘訣なのかもしれない。
第Ⅱ部「静かなる改革者の手法」
第Ⅰ部の所でも書いたのだが、「様々な価値観」を共有するといったのも一つにはある。
しかし「改革」というだけあって抵抗を示す人もいる。それは「ネガティブ」であり、かつ「ステレオタイプ」な人の主張である。その主張に関しては毅然と抵抗するのではなく、組織が崩壊しない程度に寛容な態度をとることで対応をするという。何でもかんでも禁止するのではなく、「許す」範囲を示すことが大事であるという。何でも「取り締まろう」という日本でも取り入れる必要があるのではないかと考える。
ほかにも「個人的な問題」、たとえば文化や性的嗜好と言ったところに関するものについても改革者は積極的に介入していく。それが対立や組織崩壊の火種となってしまうのを未然に防ぐためである。
「組織」を前に進ませていくためには大きな実績を言うよりも「小さな勝利」が肝心になる。たとえば「パソコンの設定」や「ゴミ捨て」に至るまで小さなことでも変えられたことで自信につながっていくと言う論理である。小さなことかもしれないが「塵も積もれば山となる」という諺があるように、それが大きな成果につながるのである。
第Ⅲ部「静かなる改革者の挑戦」
「静かなる改革者」でも大きなリスクはある。もっとも抵抗を最小限に抑えながら改革を進めていく、そのことによって「八方美人」や「偽善者」という烙印を押されることが多い。また他者との調和をはかりながら改革を行っていくため、前述のレッテルや抵抗も相俟ってフラストレーションもたまってしまう。それを避けるのはほぼ不可能だが、ある程度予防できる方法、もしくはそれに耐えられるようなねばり強さを持つ必要がある。
他者との「調和」や「価値観の共有」というところからよくある「リーダー像」と違うところがある。アメリカでは民族や宗教、文化など価値観のほかにも様々な違いがあり、組織の対立は日本のそれよりも多く、かつ複雑である。ましてや日本でも外国人労働者の増加、さらには企業のグローバル化に伴い、外国人の上司や部下を持つ人も増えていく。当然文化などの違いがあり、それが対立要素にもなりかねない。本書もそう言った環境の中でできた一冊であるが、日本でもそう言った時代が必ずくるのでくるべくして日本に入ってきたと言ってもいいのかもしれない。
コメント