一九六一 東京ハウス

61年前の東京は、昭和後期を象徴付ける街並みであったという。「古き良き時代」なのかどうかはわからないのだが、当時は高度経済成長にさしかかり始めたところで、経済大国に向けて着々と準備を行う時代だった。同時に、この60年代になると「六十年安保」「大学闘争」「ベトナム戦争」など戦後日本を象徴するような出来事が次々とあった。もちろん64年に東京オリンピックも開催されたことは言うまでもない。

その1961年の時、「団地」と呼ばれる建物も次々とできた時代でもある。その団地体験を行う事で500万円という、よくネットで出てくる広告のような触れ込みが、ある事件の引き金となる。もっともこの「体験」は現代の時代において「60年前の体験」だったのだが、今と比べると不便さはあるにしても、次々と起こる事件で体験どころで無くなり、なおかつ疑心暗鬼となる展開が不思議な要素を醸している一冊である。