右翼団体「一水会」の顧問であり、ジャーナリストの鈴木邦男氏の一冊である。鈴木氏は右派の中でも「異端」と言える存在である。その大きな所以なのが、愛国心を分析したり、元日本共産党幹部と対談本を出版したり、左派寄りの発言をすることもある。
その一方で「読書家」として知られており、月に30冊以上読む事を長年続けている。読む本のジャンルも幅広いが、その中でどの本と出逢いながら考えを醸成していったのだろうか。
第1章「出会いと別れの読書術」
読書とともに人との出逢いもある。本書は読書を通じて雨宮処凜や高野悦子、見沢知廉らの出逢いのエピソードについて綴っている。
あるページにて著者のことを調べてみたら「プロレス評論家」という肩書きもあった。本章の後半には中島らも氏のエピソードとともにプロレスについても語っている。
第2章「大作を読み通す読書術」
大作と呼ばれる作品は様々であるが、日本の中で最大と言われる大作は故・栗本薫氏の「グイン・サーガ」であろう。本編で130巻、別冊で21巻もある。一部抜粋であるが、マンガやアニメにもなったほどである。
それはさておき、著者は44冊ある「三島由紀夫全集」をはじめ、「人生劇場」(全11巻)、「大菩薩峠」(全41巻)などの読書録を綴っている。
第3章「読書戦争・ちくま編」
筑摩書房の本を通じた思想体系を中心に、脚本家の高木尋士氏との対談を行っている。著者の読書体系や第1章で紹介した見沢知廉の代表的な作品の一つである「天皇ごっこ」(高木氏の脚本で舞台化された)などにも言及している。
第4章「行動派のための読書術」
ここでは著者が行っている読書術について述べている。本書のタイトルが「読書術」であるが、「読書術」というタイトルにふさわしいところと言える。
ちなみに本章の内容は1980年に「行動派のための読書術」の第一章を復刻・加筆した形で記載されているという。ビジネスとは違い「思想(活動)家」「評論家」という視点からどのように読むことができるのかがよくわかる。さらに「行動」もあくまで「思想活動」という点での「行動家」としての読書である。
第5章「何を読んだか―1900年・2000年・2009年」
最初にも書いたとおり著者はジャンルを問わず幅広く読んでいる。それを体現しているのが本章の読書録である。90年・2000年・2009年と3つの年に読んだ本をジャンル別に紹介しているが、紹介されているタイトルだけでもその時代背景や傾向がよくわかる。
著者は読書を糧に政治活動や評論家などの活動に広げている。著者の読書録を見ると、「読書は侮ることができない」ということをひしひしと感じる。
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