後藤新平の「官僚政治」

後藤新平の存在、それは東日本大震災を機に再評価され始めているように思えてならない。というのはその80年以上前、「関東大震災」が起こったがそのときに復興の中心人物だったのが後藤新平その人である。それだけではなく、統治する前は「四害」の一つと呼ばれた台湾を劇的な発展にも貢献した。

本書は後藤新平没後80周年を記念して後藤新平の足跡や論文を元に、後藤新平の人生や思想などを読み解きながら今の日本はどうあるべきかの道標を示したシリーズのうち、官僚政治のことについて言及した一冊である。

Ⅰ.「後藤新平のことば」
官僚政治にまつわる言葉(名言?)を紹介しているが、ここでいう「官僚政治」は官庁だけではなく、会社や政党などの団体など、幅広く意味している。その官僚は自ら民の中にいなければならないが、官庁や政党も、ましてや会社も同じことがいえる。
また、後藤新平は官僚政治の弊害についても展開しているが、これは現在の官僚政治についても言えることと思えてならない。

Ⅱ.「後藤新平「官僚政治」を読むー識者からのコメント」
後藤新平の論文の一つである「官僚政治」について識者が言及した一冊である。なお、官僚政治の本文は次章にて取り上げられているが、なぜ「官僚政治」という名の論文が作り上げられたのか、後藤新平が見た「官僚」とは何か、識者は「官僚政治」を通じて分析を行っている。

Ⅲ.「官僚政治―後藤新平」
後藤新平が官僚政治についての論文を発表したのは2つある。一つは1911年、ポーランドの社会活動家・評論家のオルツェウスキーの「官僚政治」を邦訳化した論文、もう一つの論文を発表したのは1912年にその官僚政治を読み解いた論文である。当時はちょうど明治時代末期にあたる。山縣有朋が築き上げてきた官僚が、いかに醸成されていったのか、そして自ら官僚として働き、そこで得たもの、そしてその官僚政治の現状と弊害を批判しているが、それだけではない。「官僚」という存在を肯定しながらも、官僚政治のこれからについても提言をしている。

「いまこそ後藤新平を再評価する必要がある」

先の東日本大震災でも、「国難」と呼ばれるほどの財政危機とも呼ばれている。かつて日本でもそういった「国難」は何度も起こっており、その度に奇跡的な復活を遂げてきた。その立役者の一人である後藤新平からなにを学び、何を教訓とするのか、本書は官僚政治のことであるが、後藤新平を知る必要がある、ということを認識された一冊である。

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